暁 〜小説投稿サイト〜
人理を守れ、エミヤさん!
テロリストは斯く語りき
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話




「忘れてはいけないのは、俺達はテロリストだということだ」

 保存食の干し肉を喰らいながら言った俺に、アルトリアは嫌そうに顔を顰め、オルタはさもありなんと頷き同意を示す。
 こちらも神妙に頷いたマシュの傍で、ネロが怪訝そうに首を傾げた。

「シェロよ、『てろ』とはなんだ?」
「ん? ……そういえばネロの時代にテロという呼び方はなかったんだったか」

 ネロは一世紀の皇帝だ。聖杯の力の影響か、彼女が過去の時代の存在だと、意識しないと忘れてしまっている。
 しかし、ネロが現代の人間に存在を置換されたとしても、ネロが現代の常識を網羅するわけではない。そのことを理解していなければならなかった。

「テロは正確にはテロリズムといってな――ネロにはクリュプテイアの反対と言えば伝わるか?」
「む……」

 クリュプテイアとは、古代ギリシアやスパルタの秘密勤務と称される制度である。国家監督官が派遣した若者が田園地方を巡回し、奴隷の反乱防止のため、危険視される者を夜間に殺害することを職務とした。
 転じてそれは奴隷側が反発し、体制に歯向かう活動を生み出した。――テロリズムである。
 テロリズムとは政権の奪取や政権の攪乱、破壊、政治的外交的優位の確立、報復、活動資金の獲得、自己宣伝などを達成するために暗殺や暴行、破壊活動などの手段を行使することである。
 そしてテロリストとは、それらの手段を政治的に行使する者のことだ。

「……むぅ。言いたくはないが、雅さに欠けるな」
「テロはテロだからな。雅もへったくれもない」

 ネロにとって最も身近なテロは、ローマ帝政の礎を築いた男――衰退の一途を辿っていたローマを、「強者」に盛り返したローマ最大の英雄ガイウス・ユリウス・カエサルの暗殺事件であろう。あれもまた、歴史的観点から見れば最大級のテロと言える。

「大勢は既に決している。ローマは滅び、残党は僅かに七人。特異点は磐石と言ってもよく、俺達はそれに抗う少数武装勢力でしかないのが現状だ」

 後は、ネロ・クラウディウスの死を以てして、人類史はめでたく終了だ。
 ネロが死なずとも、六日か七日でローマの滅びは確定したものとされ、やはり人類史は焼却完了となる。
 正直に言おう。

詰み(・・)だ。正攻法では何をしてもこの大勢は覆らん。敵サーヴァントを幾ら倒しても意味がない。抑止力によってカウンター召喚されたらしいサーヴァントもいるというのは朗報だったが、これも全滅済み。戦力の拡充はネロの召喚するサーヴァント頼みと来た」
「……言いづらいのですが、逆転の芽はあるのでしょうか?」

 肩を竦めた俺に、マシュが深刻そうに眉根を寄せて発言した。続いてアルトリアが言う。王としての観点で、だ。

「控えめに言って戦況
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ