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人理を守れ、エミヤさん!
第二章「栄華失墜皇帝グラウディウス」
逝くは死線、臨めよ虎口
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も言えない。

「後で会うことになるだろうが、彼女のことはオルタと呼べばいい。一応、それは周知してある」
変化(オルタ)……分かりました。以後、黒いアルトリアさんのことはそのように呼称させていただきます」

 了解の意を示したマシュは、時計を一瞥し、律儀にスケジュールを述べる。

「この後の予定は、朝食を頂き、そのあと管制室でブリーフィングを行なった後、第二特異点へのレイシフトとなります。頑張りましょう、先輩」

 勿論、最大限の努力を誓う。俺は黙って頷き、礼装一式を纏うと部屋を後にする。

 ――朝食を平らげて管制室に向かうと、そこにはすでにレイシフトメンバーは揃っていた。

 ガラスのように脆く、静電気のように乾いた空気が漂う中、俺は嘆息しつつ、持ち運ばれていた装備を点検する。
 ドゥン・スタリオン号と、ラムレイ二号。前者について敢えて触れず、生まれ変わった武器庫――サイドカー付きの軍用バイクに解析の魔術をかけ、その性能を改めて把握し、どこにも不調がないのを確認する
 『勝利すべき黄金の剣』五本と『赤原猟犬』と『偽・螺旋剣』を二本ずつ。一日で己の負担にならない投影宝具の量産数はそれが限界だった。無理をすれば倍までいけただろうが、そんなことをすれば後に響く。投影が本分とはいえ、それにかまけるばかりでマスターとして動けなくなるのでは本末転倒であろう。
 ラムレイ二号のサイドカーに投影宝具を積み込み、前もって干将と莫耶を投影。それを背部の鞘に納めて吊るしておく。黒弓は武器庫だ。さて、と辺りを見渡すと、互いを完全に無視するように顔を背け合い、重苦しい空気を醸すアルトリアとオルタを見た。

 俺と共に管制室まで来たマシュは、その空気の重さに何も言えずにいた。俺も出来たら何も言いたくないが、リーダーとしてそれはできない。意を決して、二人に声をかける。

「アルトリア、それからオルタ。これから出向く戦場では勝利が義務となる。分かっているとは思うが無駄な諍いを起こすなよ」
「無論です」「当然です」
「……」

 生真面目な声音に、重く威圧感のある声音。声質は同一なのにも関わらず、どちらが発言したかははっきりと識別できた。
 秩序をよしとする騎士王。暴虐をもって圧政を敷く騎士王。互いが己の側面であると認め、同じ自分だと知るからこそ相容れぬのだろう。
 だが共に轡を並べて戦いに赴く段となり、連携を必須とされる中、己達の軋轢を表面化させて場を乱すほど二人とも子供ではない。互いに声を掛け合うことはないが、自分同士ということもあり連携に支障を来すことはあるまい。だが、念は入れておく必要がある。

「もし二人がいがみ合い、作戦実行の効率が下がると判断したら、リーダーとして、マスターとして非のある方を令呪で自害させ、カルデア
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