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許されない罪、救われる心
2部分:第一話 辛い気持ちその二
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第一話 辛い気持ちその二

「これから」
「そうね。それだったら」
「そこにしよう」
 その少しだけ取り戻した微笑みでの言葉だった。
「行くのならね」
「わかったわ。それじゃあね」
 こうしてだった。二人は今はブックオフで本を探して買って気持ちを紛らわせた。そして次の日にはだった。如月は教室の端で眼鏡をかけて黒い髪を前だけ伸ばした背の高いすらりとした男子学生と弥生を交えて話をしていた。彼は白いブラウスに黒いズボン、それにえんじ色のストライブのネクタイである。
「あの先輩だよね」
「ええ、山崎先輩」
 如月はその先輩のことを彼、室生葉月にも話した。
「知ってる?」
「聞いたことあるよ。結構有名な人みたいだね」
「そうだったの」
「うん、三年生の先輩から聞いたんだ」
 葉月はこう話す。三人は今教室の端の方に立って話をしている。
「ラクロス部でね。一年の時はいじめられていてね」
「それで今は」
「そう、後輩に対してそうしているらしいね」
「よくある話よね」
 ここで弥生が少し俯いて苦い顔をして述べた。
「そういう話って」
「そうだね。いじめられっ子がいじめっ子になるってね」
 それは葉月も言った。
「よくあることだよね」
「そうなの」
「自分がいじめられていたから自分も誰かをいじめる」
 葉月は今度は如月に対して言う。
「そういうのってあるよ」
「そうなのかしら」
「如月はそんなこと絶対しないでね」
 弥生は心配する顔になって如月に告げてきた。
「そんなことは」
「ええ」
 如月は弥生のその言葉にこくりと頷いた。そのうえで言うのだった。
「わかったわ。っていうか絶対にしたくない」
「そう言えるのね」
「だって。いじめられるのって辛いから」
 だからだというのだ。
「それは絶対にしない」
「そうだよ、そんなことしたら駄目だよ」
 それは葉月も言う。
「絶対にね」
「うん」
「いじめられる辛さわかってるよね」
 葉月はこくりと頷いた如月に対してさらに言った。
「そうだよね」
「わかってるつもり」
 如月の声は今は弱々しいものになっていた。
「それは皆同じだと思う」
「そうよね。うちのクラスってラクロス部のメンバー多いし」
「四人だからね」
「皆先輩に目をつけられてるから」
 三年のその先輩にだというのだ。
「だから」
「なら。わかるね」
「それは絶対にしたらいけないわよ」
「絶対にしないわ」
 如月は二人の言葉にも頷いた。葉月の言葉に対してだけでなく。暗くなってしまっているがそれでも確かに頷いてみせたのである。
「私も」
「そうよ。それでだけれど」
 弥生はここで話を変えてきた。
「今度転校生が来るらしいわね」
「ああ、そうらしいね」 

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