やっぱ冬は鍋でしょ!・その2
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
五の言わずにとりあえず食え。文句は食った後で聞いてやる」
出てきたら、だけどな。
「どれ、早速食べてみよう」
ヴェールヌイは何の躊躇いもなく、お玉に手を伸ばして鍋をよそう。
「同志ヴェールヌイ、君には躊躇が無いのか!?」
戸惑うタシュケントに、ヴェールヌイはフッとニヒルに笑ってみせる。
「無いね。司令官の料理の腕を私は『信頼』している。その信頼は伊達じゃないさ」
そう言いながら黄土色に染まったちくわを摘まみ上げ、一口。
「あふっ……」
噛んだ瞬間に溢れ出してきたスパイシーなジュースで口内が火傷しそうになる。が、そんな事は関係ないとばかりにその汁をジュルジュルと啜る。こぼすのが勿体無い……そう思える程に味わい深く、美味しかったからだ。たっぷりと出汁を含んでいたちくわそのものもフワフワで、それ単品でも十分に満足出来る美味しさだが、これは鍋。まだ食べていない具材がわんさかあるのだ。
「どうした?同志タシュケント。呆けていると私が全て食べてしまうぞ?」
その言葉の通り、ヴェールヌイは再びお玉に手を伸ばし、鍋をよそっていく。しかも今度は山盛りだ。その具材1つ1つを噛み締める様に味わい、ウォッカを流し込んでいく。
「幸せだ……」
蕩けたような顔で呟くヴェールヌイ。まさに幸福を表情にしたらこんな顔だろう。そんな様子を見て、ゴクリと生唾を飲み込むタシュケント。
「ほれほれ、遠慮せずに食いな」
そんな様子を見かねて、器に鍋を持って差し出してやる。恐る恐るではあったが、受け取るタシュケント。一口食べてからはもう、凄かった。ハムッ、ハフッ、ハフハフっ、ハフッとがっついていた。そこまで美味そうに食ってもらえれば作りがいもあるってもんだ。
「あ、汁は半分以上残しとけよ?」
「ん?何でさ」
「スープの残りにスパゲティとチーズ入れて、カレーチーズパスタにするからな」
汁をパスタソースにするんだから、汁が無ければそのシメは食べられない。
「は……」
「は?」
「早く言ってよ、危うく飲んじゃう所だったじゃないかぁ!」
タシュケントの逆ギレの叫びが木霊する。いや、別にシメは無理して食うもんじゃねぇがな?
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ