それでいいのか士郎くん
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
いつしか変質してしまった聖杯戦争。
万能の杯に満たされたるは黒い泥。
その正体の如何など、最早どうだっていい。重要なのは、この聖杯がために世界は滅びたということだ。
度しがたいことに、この冬木に於ける首魁は我が身である。聖杯を与えるなどという甘言に乗せられて、愚かにも手を取ってしまった小娘の末がこれだった。
……小娘とてなんの考えもなかったわけではない。自らに接触してきた者が人ならざるモノであることを見抜き、その思惑を打ち砕くために敢えて奴の傀儡となったのだ。
そして掴んだ聖杯を、小娘は使わなかった。
ほぼ全てのサーヴァントを打倒して我が物とした聖杯を。手に入れることを切望した聖杯を。使わずに、何者の手にも渡らぬよう守護していたのだ。
この変質した聖杯戦争の裏に潜むモノの思惑を薄々感じ取り、聖杯の使用は何か致命的な事態を引き起こすと直感したがためである。
しかし、出来たことと言えばそれだけ。聖杯は呪われていた。なにもしなくとも、聖杯は膨張した呪いを吐き出し、結果として世界は滅びてしまったのだ。小娘のしたことなど、所詮は徒労。滅びを遅らせるのが精々だったのである。
だが、すべてが無駄だったわけではない。滅びが緩やかなものとなったお陰で、『あること』を知ることができたのだ。
この特異点は、人類史を焼却するためのもの。即ち人間界のみならず、世界そのものを焼き払う所業だったのである。
そうなれば、たとえば人の世界より離れた幽世『影の国』もまた焼却されて滅びるということ。そして、影の国すら滅ぶということは、あの妖精郷すらも危ういということになる。
今でこそ無事だが、2016年を境に余さず滅相され燃え尽きるだろう。そして未来に於いてアヴァロンが滅びるということは、そこにいたアーサー王もまた滅んだ、ということだ。
英霊の座に時間の概念などない。
死に至ったのなら、英雄は一部例外を除いて座に招かれることになる。
アーサー王は、アヴァロンにて眠りにつく定めだった故に、死しても英霊の座に招かれることはないはずだったが、そのアヴァロンが無くなるとなると『死んだ』という事実だけが残り、英霊の座に流れていくことになった。
それは人類史が滅びるが故の異常事態である。もしも人類史が焼却を逃れ、復元されれば、アーサー王が英霊の座に登録されたという事実も消え、アヴァロンにて眠りにつくことになるだろうが、それはまだ先の話。
否、夢物語か。
現時点のアーサー王は既に生者ではなく英霊として存在している。順序が逆のあべこべな状態だが、それは間違いない。
故にこそ、この冬木に在るサーヴァントのアーサー王は、自分が平行世界の聖杯戦争で戦い、そこで得たものの
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ