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悪徳商人の誇り
第六章

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「このままだ」
「そうですか」
「ああ、だからあんた達が若し役所を動かしていてもな」
 それは絶対にないといってもというのだ。
「俺は絶対にあんた達に礼は言わないぜ」
「ではそれでいいです」
 雅も構わないとした、鈴子も同じだった。
「貴方がそうされたいなら」
「いいな」
「はい、その様に」
「おう、そうしていくからな」
 是非にとだ、こう言ってだった。
 男は二人と別れた、そして店に帰ったがすぐに甥達に役所の行政指導を受けた件で無理矢理隠居させられ今度は嫌われ爺となるのだった。
 こうして雅と鈴子のハノイでの仕事は終わった、二人はまたハノイでベトナム料理を楽しもうとしたが。
 雅の手にあるものが宿った、それは何かというと。
「闘戦経とのことです」
「兵法書ですね」
「はい、軍師である私に相応しいですね」
 雅はその書を手に鈴子に話した。
「戦のことがこれまで以上にです」
「わかってきますか」
「そして知力もです」
 こちらもというのだ。
「上がってきている」
「そう感じられますか」
「身体の奥から、そして試練を経たので」
 それによってというのだ。
「強くなった」
「そのこともですね」
「実感出来ています」
「それは何よりですね」
「これで私も試練を乗り越えました」
 あの男の顔を思い出しつつ言うのだった。
「ならばです」
「これからですね」
「次の場所に行きましょう」
「そうですね、私達はこれからもです」
「やるべきことがあるのですか」
「世界を救わないといけないです」
 鈴子はこのことを雅に話した。
「だからですね」
「これは通過点、立ち止まるものではありません」
「では食事を楽しんでから」
「また歩いていきましょう」
 雅も鈴子に笑顔で応えた、そうしてだった。
 二人で歩いていった、二人は新しい神具と力を手に入れてもそれで立ち止まることはしなかった。喜びはしても。


悪徳商人の誇り   完


                2019・1・20
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