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許されない罪、救われる心
163部分:第十五話 許される心その四

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第十五話 許される心その四

「だからね」
「幸せになの」
「そう、幸せにね」
 弥生はまた如月に話した。
「幸せになれるから」
「なっていいの?」
 如月は笑みを消して弥生に問うた。
「私が。幸せに」
「なっていいわよ」
 弥生の返答は当然といったものだった。
「そんなの。当たり前じゃない」
「当たり前なの」
「そう、当然よ」 
 そうだというのである。
「それはね」
「そうなのね」
「何度も言うけれど」
 弥生はこう前置きしてから話す。その目は如月だけでなくだ。他の三人も見ていた。丁度彼女達のところにもお菓子が来たところだった。
「誰だってね」
「誰だって?」
「そうよ、誰だって幸せになる義務があるのよ」
「幸せになる義務が」
「そう、それがあるのよ」
 こう話すのだった。
「だからね。如月だって」
「私も」
「長月も文月も霜月も」
 三人に対しても言った。
「同じよ。幸せになる権利があるのよ」
「けれど」
「ねえ」
「それは」
 しかしだった。ここで長月達は顔を伏せさせて言うのだった。お菓子を前にしてもだ。それは今は手がつけられていなかった。
「うち等のしたことは」
「だから。それがあるから」
「幸せなんて」
「許されないことだったわ」
 それは確かだと。弥生も否定しない。
「けれどそれも言ったわよね」
「ああ」
「確かに」
「その人が許してくれたら」
「いいのよ、それで」
 ここでは神無のことである。彼女が四人の謝罪を受け入れてくれたことを話すのだった。それを話してからまた四人を見て言うのだった。
「人が人を許さないとか言うのも」
「それも?」
「おかしいの?」
「私、そうも思うようになってきた」
 そうだというのだった。
「そういうのができるのって」
「ええ」
「誰なのかしら」
「それは」
「神様だと思うの」
 神のこともだ。話に出た。
「神様だけがねそういうことができるのよ」
「神様が」
「それを」
「その神様だって。今の如月達は許してくれるわよ」
 今の彼女達ならというのだった。
「そこまで傷ついて。反省してるから」
「そうなの」
「今のうち等は」
「許してもらえるのね」
「それで幸せも」
「胸を張っていいのよ」
 弥生はまた四人に告げた。
「充分にね」
「それならいいけれど」
 如月はまだ俯いていた。だがこう弥生に言ったのだった。
「幸せに。なっていいのね」
「ならないと駄目なのよ」
 弥生の言葉には切実なものすらあった。
「絶対にね」
「絶対になの」
「そう、絶対に」
 また言った弥生だった。

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