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レーヴァティン
第八十二話 最後の一人その七

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「ですから」
「そうか、ではな」
「それまでお待ち下さい」
「そうさせてもらう、しかし師匠と言ったが」
 英雄は女が今言ったその言葉に問うた。
「柔術のだな」
「左様です、私は柔術を主に使う武道家です」
「それが職業か」
「起きた時は柔道をしています」
 柔術でなく、というのだ。
「四段になりました」
「そうか、かなりだな」
「元々家が柔術の道場でして」
「そちらの武道をしてきてか」
「こちらの世界でもです」
「武道家としてしているか」
「そうなのです、ただこちらの世界では」
 女は英雄にさらに話した。
「最初からかなり強く」
「俺達と同じだな」
「外の世界から来た者は全てそうと聞いていますが」
「強さもか」
「素手でどの様な魔物からも傷を負ったことはありません」
「旅に出ていた時もか」
「そうでした、水戸に入っても」
 今いるこの街にというのだ。
「負け知らずでした、ですがならず者達を倒そうとしたところ」
「そこでか」
「師匠にお会いしまして」
 そしてというのだ。
「その強さとお人柄に惚れ込み」
「道場に入ってか」
「師事してきました」
「それでこの道場にいたか」
「そうでした」
「その辺りのこともわかった」
 英雄は女に確かな顔で応えた。
「よくな、ではな」
「お別れしてきますので」
「それまで待たせてもらう」
「それでは」
 こうしてだった、女は道場の奥に行きそうしてだった。一人の小柄な濃紺の袴と着物の老人を連れてきた。そうしてその老人に言うのだった。
「こちらの方々がです」
「外の世界から来てじゃな」
「はい、この世界を救って下さる方々です」
「そうか、ではな」
「これよりですね」
「行って来るのじゃ」
 是非にと言ってだ、そしてだった。
 老人は女にだ、こうも言った。
「してじゃ」
「これからですね」
「旅立つがその前にな」
「一度ですね」
「稽古をするか」
「お願い出来ますか」
「それで我が流派、関口流の柔術をな」
 まさにそれはと言う言葉だった。
「忘れずにな」
「そのうえで、ですね」
「旅立つのじゃ、よいな」
「わかりました」
 女は老人に確かな顔で応えた、そうしてだった。
 英雄達が見守る前で同情の真ん中に行き互いに礼をしてからだった、そのうえ稽古をはじめた。するとだった。
 その柔術は独特だった、智は二人の稽古を見て唸って言った。
「柔術は柔術でも」
「それでもだな」
「拳や蹴りを使う」
「そうした柔術だな」
「実戦向きでござる、しかも」
 さらに言う智だった。
「拳と言ったでござるが」
「拳は使っていないな」
「掌底を使っているでござる」
 そこが違うというのだ。
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