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最後のティーゲル
第五章

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「本当にな」
「ドイツ軍はもう俺達だけ」
「四人だけですね」
「そんなことになっていることも」
「そうも思えてくる」
 不吉な考えだが言葉に出した。
「どうもな」
「まさかと思いますけれどね」
「正直今年に入ってどんどんやられていますし」
「俺達も何とか生き残ってる位ですから」
「そんな状況だとな」
 思いたくなくてもというのだ。
「もうな」
「そうですよね」
「若しかと思っていても」
「正直誰にも会っていませんから」
 どうにもとだ、部下達も言う。そしてだった。
 ケンプにだ、彼等から言った。
「若しも俺達だけだったら」
「残っているドイツ軍は」
「そうだったらどうしますか?」
「死ぬまで戦うしかないな」
 これがケンプの出した選択肢の一つだった。
「それかな」
「投降しますか」
「連合軍に」
「そうするしかないですか」
「死にたくないなら降る」
 ケンプはこの選択肢も話した。
「そしてな」
「生きるならですか」
「そうすべきですか」
「投降もいいですか」
「そうだ、降るなら連合軍だ」
 こちらだというのだ。
「ソ連軍は駄目だ」
「ですね、連中は」
「無茶苦茶しますから」
「あっちには降るべきじゃないですね」
「幸いこっちはもう連合軍の戦場だしな」
 それならばというのだ。
「降るならそちらだ、そしてな」
「戦うならですか」
「俺達四人でもですね」
「やるべきですね」
「そうだ、どうする」
 そこはとだ、ケンプは部下達に真剣な顔で告げた。そうしてだった。
 四人は真剣にだ、これからのことを話したが二つに一つでどちらにするかはまだわからなかった。そんな中でまた数日過ぎた、しかしもう戦闘はなくティーゲルの燃料もだった。
 走っている時にだ、操縦をしているシュナイダーが言った。
「遂にです」
「燃料が尽きるか」
「はい、弾はありますが」
「ここ十日ずっと撃つ機会もないしな」
「それでもです」
 燃料はというのだ。
「もうないです」
「そうか、遂にだな」
「こいつも動かなくなりますね」
「そうなるな、それじゃあな」
「どうしますか?」
「何処かで燃料を調達出来ればいいが」
 こう言ってもだった。
「もうな」
「それもですね」
「部隊にも合わないままだしな」
「それならですね」
「それも出来そうにないな」
 燃料の調達もというのだ。
「とてもな」
「そうですよね」
「あとどれだけ走れそうだ」
「巡航速度でもう一キロか」
「話にもならないな」
「ですね。どうします?」
「停めるか」
 諦めた様にだ、ケンプは操縦を続けるシュナイダーに答えた。
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