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空の黒騎士
第三章
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 そしてだ、彼はそちらではイギリス軍のランカスターやモスキート相手に順調に撃墜数を増やしていっていたが。
 次第に出撃する機会が減っていった、司令は彼にそれが何故かも話した。
「常に爆撃を受けて前線では負けっぱなしだ」
「それで、ですね」
「戦力がなくなってきている」
 爆撃で工場も基地もやられている、当然そこにある戦闘機達もだ。前線では敗れその度に多くの戦力を失っている、そうした状況だからだ。
「出撃したくてもな」
「する力もですか」
「なくなってきている」
「それが今のドイツですか」
「そうだ」
 その通りだというのだ。
「残念だがな」
「そうですか」
「それでだ」
 司令はドライセにさらに話した。
「君もだ」
「出撃の機会はですか」
「減っている」
「そうですか」
「我慢してくれ」
「仕方ないですねですがこのままでは」
 どうかとだ、ドライセは司令に話した。
「ドイツは」
「大差の言いたいことはわかる」
 司令も苦い顔で答えた。
「負けるな」
「そうなりますが」
「仕方がない」
「迎撃をしたくても出来ない」
「今のドイツには戦闘機も燃料も制空権もないのだからな」
 そうした状況だからだというのだ、それでだった。
 ドライセは夜間戦闘に回されたうえで出撃の機会も減っていった、このことに喜んだのはアメリカ軍で彼等は意気揚々として爆撃をしそうして帰る様になっていた。
 戦争は日に日に連合軍有利になりもう四月になるとドイツ空軍の迎撃は昼も夜もそうそう出来なくなっていた。出撃してもその数は少しだった。
 だが四月の終わり近くになってだ、司令はドライセにこう告げた。
「君が一番得意な昼間戦闘でだ」
「戦う、ですね」
「そうだ、この基地の全力出撃になるが」
 しかしと言うのだった。
「その全力出撃でだ」
「終わりですか」
「私は君達が出撃した後基地を引き払う、そして基地の兵士達と共にだ」
「撤退ですか」
「西に向けてな」
 そこに向かってというのだ。
「そうしろとグライム元帥から密命があった」
「そうですか」
「そして君は出撃出来る戦闘機を全て率いて迎撃に出てだ」
「その後は」
「西の方の基地に連絡を取ってそこに着地してだ」
「そこで、ですね」
「戦闘を終えるのだ」
 ドライセにこう言うのだった。
「そうしてくれ」
「もうこれで終わりですか」
「何もかもな、ソ連軍はベルリンに迫っている。いや」
 司令は言葉を言い換えた。
「包囲しようとしている」
「囲まれれば後は」
「陥落だ」
 そうなるだけだというのだ。
「だからな」
「戦争も終わりですか」
「そうだ、ではな」
「それではですね」
「生きろ、ドイツは負けてもそれで終わりではないからな」
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