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温羅
第二章
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「あの者達のところに飛んで行ってじゃ」
「そしてですね」
「あの縁組を何としても止めている」
「そうしていますな」
「そうじゃ。しかし出来ぬ」
 それはというのだ。
「だからな」
「はい、ここは」
「見ているしか出来ませぬな」
「この神社で」
「それしか」
「うむ、せめて別れるだけで済めばよいが」
 温羅もこう願っていた、だが。
 温羅が言った通り男は夫婦になってすぐに女に飽きて遊び歩く様になった、そうしてある女と懇意になってその家に入り浸る様になった。
 何度も家に戻る様に言われてその時は戻るがすぐに外の女のところに行く。そのことを繰り返してだった。男は遂に入れ込んでいる女と駆け落ちし播磨で自分とよく似た性格で意気投合した男の家に居候をした。勿論女も一緒だ。
 女房となった女の心は次第に病んでいった、温羅は神社から鬼の千里眼でそれを見つつ苦い顔で言った。
「まずいのう」
「全くですな」
「この状況は」
「男は予想通りですし」
「我等が心配した通り」
 遊び歩いているというのだ。
「そして女はです」
「一人残され心を病んでいっています」
「それではです」
「やがて恐ろしいことになりますな」
「女が何をするか」
「そう考えますと」
「うむ、これは血を見るであろう。いや」
 温羅はわかった、これまで多くの縁組を見て来たことから。
 それでだ、こう鬼達に言った。
「より恐ろしいことになるぞ」
「血よりもですか」
「さらにですか」
「そうじゃ、六条の后よりもな」
 さらにというのだ。
「恐ろしいことになるやもな」
「となると」
「一体どんなことが起こるか」
「考えるだけでもですな」
「身の毛がよだちますな」
「鬼の我等がこう思うだけのことがな」
 まさにと言ってだ、温羅は神社から動けぬこの霊のことを呪いさえもした。だがこればかりはどうしようもなかった。
 それでことの成り行きを見るだけだったが遂にだった。
 外の女のところにいる男のところに女房となった女が来た、しかもそれは。
「何っ、生霊ですか」
「生霊となって出てきましたか」
「その魂だけが」
「そこまでの情念とは」
「まさに六条の后」
「いや、これは違うぞ」
 温羅は鬼達に言った。
「より恐ろしい、あの女間もなく死ぬぞ」
「ではあの生霊は死ぬ間際の」
「その時の霊ですか」
「まさに怨念が凝り固まって死ぬ」
「その時のですか」
「生きている時であれじゃ」
 怨念の塊の様な有様だったというのだ。
「ならばな」
「ここで、ですね」
「死ねば余計にですね」
「恐ろしい怨念の塊となり」
「そのうえで」
「うむ、男を祟り殺す」
 そうするというのだ。
「間違いなくな」
「では」
「既に駆け
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