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戦国異伝供書
第二十話 東の戦その十二
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「まことに」
「先程言われましたな」
「今川殿には目をかけて頂き」
 主であった義元にもというのだ。
「後々今川家の柱となる様にとです」
「雪斎殿を師匠にしてくれましたな」
「そのうえで学ばせてもらいました」
 それが駿府での家康の真実だったのだ、とかく彼は今川家には厚遇され大事に扱われ育てられていたのだ。
「雪斎殿は立派な方でして」
「当家でも頼りにされていますぞ」
 織田家にいる旧今川家の者達の中で筆頭にもなっている、それでいて奢らず何かと頼りにされているのだ。
「まことに」
「それがしも根気よく優しくです」
「何事も教えてもらいましたか」
「まさに」
 その通りだというのだ。
「非常に多くのことを教えて頂きました、そして」
「あの方にもですか」
「最初から気さくに接してもらい」
 その氏真にもというのだ。
「優しくしてもらいました」
「親しくですな」
「まるで弟の様に」
 そこまでの待遇だったとだ、家康は羽柴に暖かい笑顔で述べた。
「人質とのことですが」
「むしろですな」
「やがて今川家の柱になる」
「そこまでの厚遇でしたか」
「ははは、今の様に国持大名ではありませんでしたが」
 三河は完全に徳川の領地になっている、それで家康にしても国持大名としての自負が確かにあるのだ。
「しかし」
「それでもですな」
「今川家にいたままでも」
「徳川殿はかなりの方になっておられましたな」
「はい、ですが考えてみれば」
 飲みつつ考える顔になってだ、家康はこうも述べた。
「それは今川家が残っているということで」
「ああ、左様ですな」
 羽柴もそのことに気付いてすぐに応えた。
「織田家とはどうなっていたか」
「実は今川家を以てしても桶狭間で退けられていたと」
「お考えですか」
「今は。あの様な一方的な負けにならずとも」
 それでもというのだ。
「しかしです」
「それでもですな」
「はい、今川家が三国の大名であり続ければ」
「その時はですな」
「それがしはどうなっていたか」
「ううむ、織田家と今川家は睨み合ったままで」
「しかし織田家はどんどん大きくなっていましたな」
「ですな、遅れても」
 その勢力拡大がだ、やはり家康が織田家の拠点である尾張の東を守る三河にいることは大きいのだ。それで信長も安心して勢力拡大に専念出来たのだ。
 だが信長ならとだ、羽柴は彼の読みを話した。
「やがて伊勢、美濃と進出され」
「今の様にですな」
「天下第一の方になられていたでしょう」
「そうでしたな、その時それがしは」
「今川家の家臣、それもかなりの方として」
「吉法師殿と対していた」
 桶狭間で今川家が惨敗せず三国の国を持つ大名として残っていたならというのだ。
「そうなっ
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