暁 〜小説投稿サイト〜
レーヴァティン
第八十一話 東国その二
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「食い方がちゃうわ」
「あの人達は食べることも仕事ですよ」
 良太がこう言ってきた。
「ですから」
「それでやな」
「食べることも」
 それもというのだ。
「どうしてもです」
「参考とか比較にしたらあかんか」
「忍者とは根本から違います」
 食べることについてというのだ。
「あの人達は満腹をしても」
「満腹を超えてやな」
「実際はそうでなくとも」
「そうした食い方やな」
「はい、ですから」
「それがしも普通に食べてええか」
「そうかと」
「そういうことやな、しかしな」
 ここでさらに食って言う耕平だった。
「ここの寿司ほんま美味いな」
「それはそうですね」
 良太も同意だった、うにを食いつつの言葉だ。見れば耕平は今度は蛸、生のそれを美味く食べている。
「桜子さんが言われる通り」
「ほんまやな、これが江戸前か」
「江戸前寿司のですね」
「美味しい店の味やな」
「そうですね」
「おう、江戸一でい」
 親父が言ってきた、見るからに頑固そうな初老の親父だ。
「おいらの寿司はな」
「そこでそう言うんやな」
「あたぼうよ、こっちはもう物心ついた時から朝から晩まで握ってるんだ」
「朝から晩までか」
「おうよ、毎日か」
「おっさん寺子屋行ってたんか」
「寺子屋に行ってない時以外はだよ」
 親父もそこはちゃんと言った。
「おいらは寿司を握ってたんでい」
「そういうことか」
「そうでい、ちゃんと読み書きも出来るからな」
「それではあれか」
 今度は当季が言ってきた。
「魚へんの文字全部読めるか」
「鯖とか鯨とか鮫とかだな」
「あれ全部読めるんじゃな」
「それはもう寿司屋なら当然だろ」
 それこそと言う親父だった。
「鮪でも何でもな」
「河豚でもぜよ」
「河豚?うちでも扱っているがな」 
 親父は河豚については眉を顰めさせてこう返した。
「出すのは寿司だけだからな」
「刺身や鍋はないんじゃのう」
「ここは寿司屋でい」
 これが親父の返事だった。
「それなら当たり前だろ」
「そういうことか」
「そうでい、刺身や鍋は他の店で食いやがれ」
 親父は当季に彼が注文していたこはだを出しつつ答えた。
「いいな」
「わかりやすいわ」
「だからここは寿司屋なんでい」
「だったら寿司しか出ないって訳ぜよ」
「茶碗蒸しはあるけれどな」
 それでもというのだ。
「刺身は鍋は他の店で食いな」
「わかったぜよ、それじゃあ酒も貰うぜよ」
「酒はあるぜ」
 親父もそれはあると答えた。
「好きなだけ飲みやがれ」
「ではそうさせてもらうぜよ」
「お寿司には酒であります」
 峰夫は鰯を食べつつ述べた。
「やはり」
「そうか、酒もか」
「寿司にはでありますが」
「俺
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ