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駄目猫
第二章
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 中西が給養の仕事を食堂の中で手伝った後同じ分隊の面々と食事を摂っていると横の席からだった。
 彼と親しい航海科の大野一房士長が彼が座っている隣のテーブルから笑ってこんなことを言ってきた。
「いやあ、昨日の由伸のホームランはよかった」
「あの」
 大野の言葉を聞いてだ、中西はすぐに自分の向かい側の席で食べていた工藤に対して言った。
「今から」
「ああ、行って来い」
 工藤もわかっているので笑って返した。
「また負けたしな」
「またはないじゃないですか」
「実際に負けてるじゃねえか」
 工藤は笑ったまままた言った。
「そうだろ」
「ですからそんな時もありますよ」
「いつもだろ」
「いつもじゃないですよ、じゃあ」
 ここまで話してだ、そしてだった。
 中西は一旦席を立ってそれから大野の向かい側の席に座りなおした、勿論食事を入れたトレイも箸も一緒だ。
 彼はその席に座ってから大野に言った。
「大野市長とお話がしたかったんですよ」
「ああ、どうしたんだ?」
 大野はわかっているんでニヤニヤとして応えた。
「昨日の試合だよな」
「いい試合でしたよね」
 中西は必死の声で言った。
「そうしてでしたよね」
「由伸がサヨナラホームラン打ってな」
「あれはあえてなんですよ」
 必死の声で言うのだった。
「阪神はここでペナント全体を盛り上げる為にです」
「負けたのかよ」
「そうです、ここで阪神が負けて」
 そしてというのだ。
「ああした負け方ならペナント全体が盛り上がるって思って」
「あえてか」
「打たれたんですよ、いい試合でしたよね」
 中西は大野に力説した。
「あえてそのいい試合を提供したんですよ、阪神は」
「だから負けを選んだのか」
「そうです」
 まさにその通りだというのだ。
「ですから」
「阪神は勝てたけれど野球を面白く為にあえて一敗を選んだ立派なチームってことだな」
「そうですよ、阪神凄いですよね」
「うんうん、いいなあ」
 大野は中西の話をここまで聞いて目を閉じてだった。
 芝居臭くしきりに首を縦に振って頷いてみせた、その口元には笑みがあった。そのうえで言うのだった。
「起きながら夢が見られる奴は」
「夢じゃないですよ」
 中西はあくまでこう言い返した。
「本当に阪神はそうして今年は」
「優勝か」
 まだ目を閉じて言う大野だった。
「今年優勝か」
「絶対にそうなりますよ」
「わかった、じゃあな」 
 大野はようやく目を開いた、そうして中西の左肩に自分の右手を優しく何度もぽんぽんと当ててこう言った。
「いい夢見ろよ」
「夢ですか」
「ああ、夢だ」
 中西に言うのだった、実は大野は中西とは立場を越えて仲がよく中西にとっては有り難く頼りになる先輩で友人
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