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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
86話:特権
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イエンタール卿。それにフェザーン視点でワレンコフ氏に話を聞いてみても良いかもしれない。こういう時に意見を求める事も、幼年学校時代の俺には苦手なことだった。素直に意見を求められるようになった辺り、少しは成長出来ているのだろうか?そこでまた伯に言われたことを思い出していた。4月に酒びたりの生活のツケが回り、俺の父親が病死した。当初は葬式に参列する気は無かったが

『ミューゼル卿、今、許してやれとは言わぬ。だがな、母上の死も事業の失敗も、グリューネワルト伯爵夫人が後宮に入ることになったのも御父上の責任ではない。自分の子供を守りたい。より裕福な暮らしをさせてやりたいと思わぬ親はおらぬ。それに毎月28日はグリューネワルト伯爵夫人と偲ぶことになる。お墓参りを一生せぬと言う訳にもいかぬし、父上だけ離して埋葬するわけにもゆくまい?
行動せずに後悔する事はあっても、行動して後悔することは無い。それに当主として喪主を務めるのも嫡男の役目だ。卿がせぬならグリューネワルト伯爵夫人が差配する事になろう?そんな事になれば、宮廷内での攻撃材料にされかねん。葬式は故人の為にするものではない。遺された者たちの為にするものだ。喪主の件、きちんと果たしてくれるな?』

そう言われれば、断る事も出来なかったし、俺自身、仮に喪主をしていなかったら後悔していただろう。今思えば俺には『姉上を守れる』、『ミューゼル家の生活を守れる』立場も力も無かった。父を憎んだが、『守れなかった』事が罪なら俺も同罪だ。俺は自分の罪から逃げる為に父を憎んだのだろうか?はっきりしているのは『同じようなことが少しでも起きない世の中を作りたい』と思い始めている事だ。そう言う意味では、叛乱軍でも似たような不条理があることを知れたのは収穫だった。あちらにも俺と同じように今の有り様を不満に思う叛徒がいるという事なのだから。


宇宙歴793年 帝国歴484年 8月上旬
首都星ハイネセン シルバーブリッジ
ユリアン・ミンツ

「ヤン大佐、起きてください。そろそろ起床のお時間ですよ」

「ユリアン、あと5分、いや4分50秒......」

「分かりました。紅茶と朝食の仕上げをしておきますからあと4分ですよ」

僕はこの家にお世話になり始めて数日後から、恒例になりつつあるやり取りをしながら、ヤン大佐に起床を促すと、キッチンに戻り、熱しておいたフライパンにベーコンを乗せて大佐のお好みのしっとり目に焼く。そして卵を静かに割り、一緒にすこし水を入れて蓋をする。このタイミングでトースターのスイッチを入れてから、沸かしておいたお湯をティーセットに注ぎ入れる。そうこうしているうちに目玉焼きが半熟より少し硬めに焼きあがる。火を止めてお皿に盛り付けたところで、トースターから『チン』という音がしてトーストが焼きあがった。

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