第六章
第61話 突入(1)
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ます」
ヤマモトが一人ずつ声をかけていく。
国王のほうは……ヤマモトの隣で、俺のほうをじっと見ていた。
薄暗いせいで表情はわからないはずなのだが、何を言いたいのかはっきりと伝わってくる。
俺は目をしっかり合わせて、少しオーバー気味に頭を下げた。
「よし、そろそろよいタイミングである。準備はよいか」
ヤマモトの号令に、全員が返事をする。出発だ。
現在、両軍を隔てている川。
その川幅は広いが、川中島に陣地を造りにいくときに渡ったポイントは、水深がかなり浅くなっていた。
そこは両軍がにらみ合っているところからの距離も十分であるため、通ってもまず敵に察知されることはない。
突入部隊はその場所まで戻り、無事に川を渡った。
夜の盆地。
風はひんやりとしており、濡れた足には結構な冷たさを感じる。
そして暗闇の中を、ひたすら走る。
「リクさん、そろそろ入り口近くです」
タケルの言葉を受け、後ろからついてきている兵士に対し、進み方を変えるよう指示を出した。
当初の計画どおり、山の斜面スレスレのところを、姿勢を低くして慎重に進む。
現在は象山の入口のみが使われており、舞鶴山と皆神山の入り口は閉鎖されているらしい。
総裁がいるのは舞鶴山エリアなので、突入部隊は象山の入り口から中に入り、そこから連絡通路を通って舞鶴山エリアを目指すことになる。
「あれが入り口ですが……。見張りがいますね。普段はいないのですが」
象山の斜面にある入り口。
今は正面ではなく横から見ているので、少し見づらい。だが、こぼれる薄い灯りから察するに、どうやら想像していたよりもだいぶ小さそうだ。
そしてそのすぐ前に、普段はいないという見張りの影。今は警備隊が外に出ている非常事態なので、臨時で置いているのだろう。
暗闇に紛れていることもあり、見つかることなく、かなり近くまで進めた。
カイルがヒソヒソ声で話しかけてくる。
「兄ちゃん、どうすんの? あの見張り」
「かわいそうだけど、気絶させるしかないかな。通してくれなんて言えないだろ」
「じゃあオレに行かせて」
「……」
こいつなら、ほぼ確実に大丈夫だとは思う。
ただなあ……。
「へへ、やっぱり心配そうだね」
「なんで嬉しそうに言うんだ。当たり前だろ」
「心配ならクロに協力してもらおうよ、責任者さん」
こんなときなのにからかってくる。
まあそうしますか、と思ったときには、クロがすぐ目の前に来ていた。
「呼んだか」
「……呼ぶつもりだった。あの見張りを気絶させたいんで、ちょっと音を立てて注意を引きつけてもらってもいいかな」
「わかった」
クロは返事をすると、飛び出して
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