暁 〜小説投稿サイト〜
稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
72話:皇女
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惑うアンネローゼ様をなにかとベーネミュンデ候爵夫人が気遣って下さったと漏れ聞いたし、少しでも御恩をお返しできればと思っている。ラインハルト様も、何だかんだと言いつつ『ご機嫌伺い』を続けているのも、そういう思いがあるからだろう。

「あらあら。ケーキの用意をしている間に随分盛り上がっているのね。ジーク、またお茶の腕前を披露してもらっても良いかしら?」

そうこうしている内にアンネローゼ様がサロンにお戻りになられた。自分が入れたお茶で喜んでいただけるのは光栄な事だ。そして、これもおそらく『ご機嫌伺い』の報酬なのだろう。『ご機嫌伺い』には必ずアンネローゼ様が同席されるし、決まってそのあとに、3人でお茶や晩餐を共にする。役目を果たす以上、報酬がついてくる。普通の事のように思えるが、官吏をしている父の話を聞く限り、そんな配慮を欠かさない上役を持てた事は奇跡に近いらしい。

「私のお茶でよろしければいつでもお入れしたいくらいです」

そういって、リューデリッツ伯流のお茶の準備をする。そう言えば、候爵夫人ともなれば身分を気にされるだろうと思ったが、ベーネミュンデ候爵夫人にも私のお茶を楽しんで頂けた。ディートリンデ皇女殿下も、すこし大人しめだが、優し気な方だ。もしかしたら、こちらが身分を気にしすぎているだけで、思った以上にお慰めできているのだろうか?そうなら嬉しい限りだと思いながら、最初にアンネローゼ様ご愛用のカップに、紅茶を注ぐ。紅茶の良い香りが鼻孔をくすぐった。楽しんで頂けるお茶が入れられたようだ。
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