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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
71話:異動
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 宇宙港
ヤン・ウェンリー

「ヤン?まさかあなたまで異動なんて、すっかり寂しくなってしまうわ」

「まあ、これも雇われ人の宿命だからね。統合作戦本部記録統計室は私にとっては楽園だったから残念だけど、好き勝手に資料を読み漁っていたからなあ。前線で苦労して来いってことなのだろうね」

見送りに来てくれたジェシカが、寂しそうな表情でため息をついた。こういう時に気の利いた言葉を言えれば良いのだが、そういうのは苦手だ。困った時の癖で頭を掻きながら、趣にかけた言葉を口にしてしまう。

「統合作戦本部記録統計室が楽園だなんていう同盟軍士官は、あなたぐらいでしょうけど......。身体には気を付けてね。帝国軍は攻勢を強めていると聞くし、エルファシル星系が戦場になったことは無いってジャンから聞いたけど、前線に近い事は変わりがないもの」

おそらくジェシカの婚約者になるであろう同期のジャン・ロベール・ラップは彼の将才に相応しく正規艦隊の司令部参謀に転任した。彼ならいずれは将官になれるだろうし、ジェシカの事を幸せにしてくれるだろう。その当人は、所属する艦隊が哨戒任務の為、前線付近を遊弋中のはずだ。話をする機会があればよいが......。

「ジェシカ、わざわざ見送りに来てくれてありがとう。そろそろ時間だ。また話せるのを楽しみにしているよ」

お礼を述べてからトランクを持ち、搭乗口へ向かう。搭乗口に入る前に一度振り返って、ジェシカに軽く敬礼してからシャトルの指定座席に向かった。エルファシルの駐屯基地への到着は4月だ。なんだかんだと乗り継ぎがあるため、思った以上に時間がかかるのと、定期便も豊富なわけではないのでこの時期に出発することになった。
シャトルの出発を待ちながら、戦史研究科廃止への反対運動がきっかけで縁を得たキャゼルヌ先輩と士官学校の後輩アッテンボローがひらいてくれた送別会の事を思い出していた。

「それでは、ヤンが変な所でつまずかないことを願って!」

妙な乾杯の音頭から始まった送別会だが、この2人とはなんとなく馬が合うので居心地が良いのも確かだ。第一志望の経済学部の受験日を間違え、士官学校へ入学。組織工学に関する論文を書き、それが大企業の経営陣に認められてスカウトされたキャゼルヌ先輩。本来ジャーナリストを志望していたが、そちらの大学受験には失敗し、士官学校に入学したアッテンボロー。そして歴史学者志望で、無料で歴史が学べるからと士官学校を選んだ私。
もともと軍人志望ではなかったという共通点と、軍人といえば、どちらかと言うと精神論を重視しがちな中で、そういう事は上官の部下への怠慢だと考えている事も、居心地の良さにつながっているのかもしれない。

「しかし、ヤン先輩。統合作戦本部記録統計室から、エルファシル駐屯基地へ転出と言うのも
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