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人類種の天敵が一年戦争に介入しました
第14話
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 マ・クベの乗るザクTの胴体に銃口を向けながら、つまりザクTの装甲越しにマ・クベに銃口を向けながら、野良犬の操るスモウレスラーはするするとザクTから距離をとった。そのままゆっくりとザクTの周囲を廻る。護衛のザクUの射線に背中を向けたまま入って来たが、総司令官に銃を向ける野良犬を撃つ部下はいなかった。
 完全に、間違いなく、野良犬は撃たれた後に回避した。弾丸が届くまで数秒という長距離ではない。撃ってから当たるまで1秒を切る。撃たれたことを認識し、機体に回避動作を入力し、機体が動き、弾丸を避ける。これを1秒以内にこなすのだ。
 生身なら、まだわからないではない。考えるより早く、咄嗟に、反射で動く、反射で避けるということも、あるかもしれない。だが、機械は人間の反射では動かない。パイロットが反射的にかわそうとしたところで、それは狭いコックピットの中でかわそうとするだけの動きに過ぎない。コックピットの中で身体をぶつけるのが関の山だ。パイロットがコックピットの中で身体を動かしても、動作を入力されていないモビルスーツは立ち続ける。
 一方で、野良犬は、スモウレスラーは避けた。撃たれたことに気付いた野良犬の反射神経と、その反射を体現できる機体の追従性と、回避を可能とする、見た目のドスコイ感からは想像も出来ない敏捷さ、瞬発力。

――何もできない――

 01の独走で露呈した彼我の戦力差は、連邦軍の戦車大隊が壊滅した衝撃以上にその場にいたジオン公国の軍人を打ちのめした。
 護衛が動けない――動かないのは、まだ良い。動けばマ・クベ中将が二階級昇進でマ・クベ上級大将かマ・クベ元帥になるだけだ。ジオン公国軍には上級大将も元帥もないから大将で止まるだろうが。動けなくとも、動かなくとも、どちらであっても事態を見守る選択は正しい。つまり人質状態のマ・クベは独力で状況を打破しなくてはならない。
 この場合、アクションを起こすということ自体がリスクである。お互いに兵器に乗っていて、しかも生殺与奪は相手にある。迂闊な動きは死に直結するだろう。だからこそ護衛は動かないが、マ・クベはこの一見すると詰みにしか見えない状況は逆にチャンスと捉えていた。
 彼我の戦力差が有りすぎるからだ。あまりにも相手が強すぎる。強すぎるから、今、現在、マ・クベは生かされている。マ・クベが、あるいは護衛が何かしたとしても、何をしようと対応可能だからこその相手の余裕なのだ。そうでなければ01に続いて蒸発していたに違いない。
 マ・クベが生かされている理由はもう一つある。野良犬はマ・クベに用があるということだ。何の用かまではわからないが、何かがある。でなければさっさと皆殺しにするか、無視して飛んでいってしまえば良い。どちらを選ぶのも野良犬の自由で、どちらを選んでもマ・クベの側に阻止する力はないのだ。
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