第五章
第49.5話 道中
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言えばお前、元の時代では勉強があまり好きでなかったのだろう?」
「あまりどころか、大嫌いでしたよ」
「それはもったいないぞ? 知識がないと面白く思えないものがこの世にたくさんあるだろうに」
「そうなんですかね?」
「そうだ。景色一つにしてもそうだろう。同じ景色を見ても、勉強している者とそうでない者では、見えることや感じられることが違う。勉強している者が見ると面白く感じるモノが、勉強していない者にはつまらなく感じてしまうということもあるわけだ。
面白いと感じるモノが多いほうが、生きていて楽しいのではないか?」
「……アナタ、ほんとに十二歳ですか」
老人の説教のような言葉に、思わず突っ込んでしまった。
だが国王が勉強好きなのは、普段の姿を見ていてもすぐにわかる。
最近は春先の繁忙期を抜けて少し余裕が出てきたそうなのだが、仕事が終わったあとも、毎日夜遅くまで灯りを付けて勉強していたようだった。
「よし。もうよいぞ。ありがとう」
「どういたしまして」
国王を降ろすためにしゃがむ。
降りる際に、また頭をポカリと叩いてきた。なんでや。
しかし、これでめでたく履行されていなかった約束も無事に果たされた。
おやすみなさいの挨拶をして、部屋を後にしよう――そう思ったのだが。
「今日は、お前もクロもここで寝るようにな」
……。
「いや、そういうわけにも」
「カイルとタケルには、今日リクとクロを借りると伝えてある」
「……そりゃまた段取りがよろしいようで」
***
高さはないが幅広のベッド。そこに入ると、すぐさまくっつかれてしまった。
「あの、あまりくっつかないほうが」
「かまわぬ」
「俺がかまうんです。あと胸筋触るのは禁止でお願いします」
「それもかまわぬ」
「だーかーらー」
ダメだ。カイルと人種が一緒だ。言っても無駄系である。
「クロよ。お前も来るのだ」
国王の言葉の意味がなんとなくわかったのだろう。クロは、俺が呼ぶ前にベッドまで来た。
「……リク、よいのか?」
「ハイ。国のいっちばん偉ーい人がいいと言ってます。ありがたくあがってください」
投げやりにそう言ったら、また国王に頭をポカリと叩かれた。
クロが飛び乗ると、ベッドはほんのり揺れた。
壊れそうな気配はまったくない。二人と一匹を支えられるだけの、しっかりとした造りになっているようだ。
クロは、俺と国王の足元あたりで、控えめに丸くなるようにして横になった。
「リク」
「はい」
「さっき、神から言われたぞ……。リクがいつまでもいてくれると思わないほうがいい、と」
「へえ、そんな話を。でも、それは前にも言いましたが、そのとおりな
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