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オズのエリカ
第六幕その九

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「その棘が怖くて」
「それでなんです」
「薔薇からはなの」
「蜜を採るどころか」
「近寄ることもなの」
「していないです」
「大丈夫よ」
 アンは女王バチに笑顔で言いました。
「それは」
「大丈夫ですか?」
「ええ、何ならね」
 それこそと言うのでした。
「その薔薇に皆で行きましょう」
「薔薇園にですか」
「そしてね」
「薔薇の花に寄って」
「蜜を採ればいいのよ」
「棘が刺してきませんか?」
 先程のミツバチが恐る恐るアンに尋ねてきました。
「そんなことをしても」
「大丈夫よ」
 アンはそのミツバチに笑顔で答えました。
「触らないといいから」
「そうですか」
「ええ、薔薇の棘はね」
「自分から刺してくることはですか」
「してこないわ、絶対にね」
 まさにというのです。
「だからね」
「安心してですか」
「ええ、近寄ってね」
 そのうえでというのです。
「蜜を採りましょう」
「それなら」
 女王バチはアンの言葉を聞いてでした、そのうえで彼女に言いました。
「今から薔薇園に案内しますので」
「そしてよね」
「薔薇の棘が刺して来ないかどうか」
「ええ、実証してみせるわ」
 笑顔で言ったアンでした、こうして一行は今度は女王バチを筆頭とするミツバチ達に森の中の薔薇園に案内してもらいました。
 そこでは紅い薔薇達がとても奇麗に咲き誇っています、アン達はその薔薇達を見てうっとりとしていますが。
 ミツバチ達は近寄ろうとしません、アンはその彼等に笑顔で言いました。
「じゃあ今からね」
「はい、薔薇にですね」
「近寄ってですね」
「本当に棘が刺して来ないかどうか」
「実証してくれるんですね」
「そうさせてもらうわね」
 是非にと言ってでした、そのうえで。
 アンは実際に薔薇園に近寄りました、するとです。
 実際に薔薇の棘達はアンが近寄っても自分達から刺すことはありませんでした、薔薇自体が動くことすらありません。
 アン以外の誰が近寄ってもでした、全くです。
 薔薇は動きません、それを見てミツバチ達は口々に言いました。
「ひょっとして」
「本当に?」
「薔薇の棘は刺さないの?」
「そうなの?」
「見ての通りよ。薔薇はハエトリ草じゃないのよ」
 アンがここでまたミツバチ達に言います。
「だからね」
「棘があってもですか」
「動かなくて」
「自分達から刺すことはですね」
「ないんですね」
「ええ、そうよ」
 その通りだというのです。
「だからね」
「僕達もですか」
「皆で近寄っても」
「そうしてもですね」
「ええ、安全よ」
 無事に蜜を採れるというのです。
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