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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
66話:迷走
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彼女の伝手から出演オファーを受けたが、私は自分のネームバリューを自覚している。あの勘違い女は貸しを作ったつもりだろうが、むしろ貸しを作ったのはこちら側だろう。
まあ、彼女はそこまで配慮ができるタイプでもない。古巣相手に、さぞ高飛車に自分が動いたからトリューニヒトをキャスティングできたのだと恩着せがましくまくしたてるに違いない。それを思うと中身が無い女だと、笑いがこみあげてくる。
そもそも、どこまで代議員への志向があったのやら。若いころはその容姿でアナウンサーとしてちやほやされたが、年齢を重ねて年相応の見識が発揮できない事がバレる前に、また若さを売りにできる代議員に転職したというのが関の山だろう。

「本日はこの後、会食がはいっております。車の手配を確認しますので、しばらくお休みください」

秘書がそういうと控室を出て行った。ある企業の経営者の次男だ。少しでも政府とのパイプを作りたいらしく、大学卒業後にそのまま私の下に後援者の依頼で来た人材だ。目端は利くので重宝はしている。

話を戻そう。私は立候補するにあたり、中道派の政党を選んだ。伝手が一番あったのも確かだが、右派も左派も、所属した時点で、政策的な自由はかなり制限される。中道なら、その時の状況に応じて、より多くの市民が望むであろう政策を提案できる。あとは市民の感情の表と裏を理解しているかだ。表立っては、戦争の勝利に向けて協力したいと答えるだろうが、自分の命と全財産を喜んで差し出す市民などいない。裏と言う面では、表立っては協力すると答えながら、とはいえ、もう自分は十分に犠牲を払ったと思いたいのだ。
だからこそ一見威勢の良い事を述べても、『実現可能性』というトッピングが必要だし、少なくとも自分はもう犠牲を払わなくて良いのだと勘違いさせるニュアンスが必要になる。その辺りが、あのちやほやされることでしか自分を満たせない空っぽ女と私の違いだ。

右派政党の党首が女性という事もあったのだろうが、この党首もいただけない。父親と夫と子供が戦死したことを事あるごとに叫ぶが、親類縁者が戦死したなど、今の同盟ではありふれた事だ。私から言わせれば、彼女は3人分の戦没者年金を受け取り、さらに代議員としての職と給与をもらっている。最初は同情されたとしても、そのうち家族を失った腹いせに、同じ境遇の人間を増やそうとしているだけだと思われるだろう。
同情され続けるには、金銭面で恵まれ過ぎている。そしてあの空っぽ女だ。威勢の良い事を言っても実現できなければ支持され続けない。より過激なことを言うしかなくなり、自滅するか、国家に多大な損害を招くかして、その名は忌み嫌われる物となるだろう。そうなれば私が多少の功績を上げておけば、私を選んだ市民は自分の選択が正しかったと満足できるだろう。

そもそも論で、空っぽ女を含め、右
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