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永遠の謎
27部分:第二話 貴き殿堂よその五
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第二話 貴き殿堂よその五

「現実主義である私がこう言うのが」
「それは」
「素直に申し上げて頂いて結構です」
 遠慮は不要というのであった。
「それにつきましては」6
「そうですね。この場合の遠慮は失礼になります」
 太子も察した。それがわからない彼ではなかった。
 それでだ。思い直してこう言うのであった。
「実はそう思っています」
「そうですか。やはり」
「ですが」
「ですが?」
「それでもほっとしています」
 そうだというのであった。それが太子の言葉だった。
「まことに」
「私が殿下に対してこう思われていることがですね」
「その通りです。私はよく誤解される人間ですので」
「殿下、それについてもです」
 ビスマスクは太子に顔をやって話してきた。ここでもだった。
「その人を理解できるのはです」
「理解できるのは」
「その人と同じかそれ以上の器を持つ者だけです」
「それだけですか」
「そして」
 ビスマルクの言葉は続く。
「同じ時代にいてはかえってわからないこともあります」
「同じ時代ではですか」
「そうです。同じ時代にいれば。かえってわからないものです」
「それは何故でしょうか」
「人間は相手の顔は一面からしか見えません」
 こんなことも言うビスマルクだった。
「もう一面は。方向を変えれば見えますが」
「それには気付かない」
「そうです。そしてその目で見ているからそれをどうしても信じてしまいます」
「しかし違う時代ならば」
「それが変わります」
 こう太子に話していく。その言葉は切実なものだった。
 バイエルンの太子が相手である。しかしプロイセンの宰相である彼はそれでもなのだ。その太子に対して親身に話をするのだった。
「様々な書を読み話を聞くことによってです」
「成程、それでなのですか」
「この時代で理解されなくても」
「されなくても」
「後の時代では違うこともあります。特に殿下は」
 彼はというと。
「今よりむしろ後の世になってです」
「理解してもらえますか」
「はい、私はそう思います」
「そうであればいいのですが」
「少なくとも今の時代でも」
 ビスマルクは太子をさらに見た。言葉はより親身なものになっている。
「殿下を理解する者はいますので」
「貴方もですね」
「そうでありたいと思っています」
 珍しいことにだ。ビスマルクが謙遜を見せた。これはプロイセンの者達も見たことのないものだった。非常に珍しいものであるのだ。
 だが彼は確かにそれを見せてだ。言うのであった。
「是非共」
「私を理解してくれますか」
「そうした者はそれなりにいる筈です。それはお忘れなきよう」
「そうであればいいのですが」
「そして。また述べさせてもらいますが
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