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善政を敷く領主
第三章

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 あらためてその書を読み執事に言った。
「優れた学問だよ」
「天使族の学問も」
「だからね」
「学ばれてですね」
「統治に役立てるよ」
「左様ですか。しかし旦那様のその種族や身分にこだわらないご気質は」
 執事は主に彼の後ろから尋ねた。
「どうして備わったのでしょうか」
「学問からだよ」
 サタンは書を読みつつ執事に答えた。
「学んでいるとね」
「種族の違いはですか」
「無用な争いや衝突の原因でしかなく」
「統治にいいものではありませんか」
「そのことはわかったから」
 だからだというのだ。
「私はね」
「そうしたものにはこだわらないのですか」
「そうなったよ、だからこれからもね」
「学ばれてですか」
「そして種族にはこだわらずね」
「統治をされていきますか」
「そうしていくよ、天使族ともね」
 その魔族とは相反する彼等とも、というのだ。
「これからもね」
「交流を続けられて」
「得るものを得ていくよ。そして父上にも」
「天使の国とですね」
「国交を結ぶ様にお話するよ」
 この言葉の通りだった、彼は実際に父である魔王に天使族の国との国交を提案した、魔王はこの提案に驚き国中の議論となり激しい論争の末に国交樹立となった。このことは大きな話だったがサタンはことは成ってからまた言った。
「これでまたね」
「利益を得られますか」
「そうなったよ、天使族ともね」
「争うよりもですね」
「手を結べたら」 
 それならというのだ。
「そうするに越したことはないからね」
「これでよしですね」
「そう、本当によかったよ」
 笑顔で言うサタンだった、この度のことは彼の功績となりその名声をさらに高めた、善政を敷き尚且つ平和主義で先見の明がある素晴らしい領主であると。だがサタンはその名声に惑わされず日々学問と政に励むだけだった。よりよい善政を敷く為に。


善政を敷く領主   完


                2018・10・18
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