暁 〜小説投稿サイト〜
稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
59話:再訪
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治領 酒場ドラクール
ザイトリッツ・フォン・リューデリッツ

大分ご無沙汰になった懐かしいドアを押し開けてると、白髪の方が割合が多くなったマスターと目が合う。嬉しそうに目礼をしてくれたので、こちらも目礼を返す。コーネフさんからは既に代替わりしたと聞いていたが、事前に予約を入れていたので、出てきてくれたのだろう。カウンターに歩みを進めて

「ご無沙汰しました。1杯目はマスターにお任せしますのでよろしくお願いしますね」

と言い添えると、嬉しそうにうなずいてくれた。もっとも、後継ぎは俺がフェザーン駐在武官だった頃からここでシェイカーを振っていたバーテンダーだ。こちらとも顔見知りだし、実際、マスターの隣で、プロ特有の見栄えするグラス磨きをしている。こちらにも目礼してから、なつかしさとともにVIPルームへの通路を進む。今日のお供は、フランツ教官に鍛えられたリューデリッツ伯爵家所属の従士達だ。内々の話も出るだろうし、ドアの外に待機してもらう。相変わらずだが、約束の相手は先着していた。

「コーネフさん、相変わらずですね。ご無沙汰していました。お待たせして嬉しく思うのもおかしな話ですが......」

「こちらこそ、閣下がお変わりなく嬉しく思います。本来ならヤンさんも同席したかったでしょうが、残念です」

「急な話で、私も驚きました。ヤンさんのおかげで辺境星域もかなり発展しましたし、お会いしてきちんとお礼を伝えたいとも思っていたのですが......」

私たちと共同経営であちら側から農業・鉱業向けの機械とメンテナンス部品を調達してくれていたヤンさんが、商船の核融合炉の事故で急死したのが3月、折悪く前線で叛乱軍の動きが活発化していた背景もあり、対応をコーネフさんに一任せざるを得なかった。

場が少し沈んだタイミングでノックとともに、初めの一杯が届いた。マスター直々に持ってきてくれたが、マスターもヤンさんのことを覚えてくれていたらしい。オンザロックでツーフィンガー分のウイスキーが注がれたロックグラスがそれぞれの手元に置かれる。そしてもう一つのグラスが、空いた席にコースターとともに置かれた。

「あの方も気持ちの良い飲み方をされる方でしたので......」

一礼すると、マスターは部屋から出ていった。黙ったまま、お互いにグラスを少し掲げ、香りを楽しんでから少し口に含む。ちびちび楽しむのがあの人の流儀だった。コーネフさんも同じようにちびちびとウイスキーを楽しんでいる。しばらくの間、無言の時間が続いた。

「報告書にもまとめましたが、お預かりした資金で、ヤンさんの持ち株は買い戻すことが出来ました。ご指示頂いたフェザーン国籍の証券会社名義にしてあります。今後は、あちらでは代理人を立てず、独立商人を通じて、機械とメンテナンス部品を調達する
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