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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
53話:暗雲
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ルブレヒト様の幼年学校入学試験の対策も任された。すでに必要なことを体験させて頂いていたとは。なら、後は自ら動いてみるだけだ。人付き合いは苦手だったが、このお屋敷でお世話になってから、多少はマシになったと思う。そんなことを考えていると執務室のドアがコンコンっとノックされ、ご長女のフリーダ様が入ってこられた。

「パウル兄さま、宿題が終わったわ。皆、庭で鍛錬しているしご本を読んで欲しいの」

「承知しました。では遊戯室へ参りましょう」

フリーダ様の手を取り、遊戯室へいざなう。幼いころから男子が多かったせいか事あるごとにあぶれてしまいがちなフリーダ様のお相手をするのも私の役目だ。横目でみると閣下も苦笑しながらうなずかれていた。


宇宙歴780年 帝国歴471年 6月上旬
首都星オーディン リューデリッツ邸
ザイトリッツ・フォン・リューデリッツ

「閣下、お呼びとのことでしたので参りました」

執務室で来期の工事計画書を再確認していると、ワルターがノックをして部屋に入ってきた。鍛錬の方は一段落したらしい。執務机の向かいの椅子を勧める。

「鍛錬の方はどうだい?オスカーは筋も良かったし、仕込んでいて楽しそうだったが、アルブレヒトは悪くはない程度だ。手がかかるだろう?」

「閣下はいつも率直な表現をされますな。確かにロイエンタール卿と比べると見劣りはするかもしれませんが、ひたむきに基礎を続けられる根気強さがあります。名人には成れずとも、伯爵家のご嫡男としては十分な実力を身に付けられると思います。それに才能があり過ぎると教え甲斐がないですから。楽しくやらせて頂いております」

「そうか。アルブレヒトには良くも悪くも私の名前がついて回る。普通なら賞賛されるべきところでも、これ位できて当たり前と思われるだろう。家が代々軍人だからと自分も軍人にならなければならないと思い込まない様に接してくれ。周囲が軍人ばかりだから難しいかもしれんが......」

ワルターは意外な話だったようで少し驚いている様子だ。

「意外かな?だが、私が志向していたのは軍人ではなく事業家だった。おばあ様の期待もあったし、代々軍人の家系だから他の道は選べなかったが、幼少のころから100万の敵を倒すことより100万の臣民を養う事の方が大業だと思っていたからな」

「閣下は500万以上の敵を屠りましたが、数億人を養っておられます。確かに言われてみれば、どちらに志向があるのは明白でしたな。失礼いたしました」

どうやら腑に落ちたらしいが、今日の本題はこの話題ではない。

「それで本題だが......。ワルター?芸術家の卵と仲が良いらしいが、パトロンとしても支えているのかな?」

意外なところからの返球だったらしい。ワルターは返事に困っている。

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