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未亡人
第十章

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「それでどうでしょうか」
「先代もそう言われていたので」
「遺書で書かれているので」
「だからですか」
「この件については」
「はい、中井君が宮田家に入るかどうかは別の話にしまして」
 それでもというのだ。
「認めるべきです、彼にしても奥様にしても本気です」
「遊びではなくですね」
「あくまで好き合っている」
「愛し合っていますか」
「だからですか」
「そうです、特に中井君は奥様を何があっても幸せにすると誓っていて」
 特に男である彼のことを言うのだった。
「医者としてです」
「いざとなれば奥様を養い」
「そして駆け落ちもする」
「心中なぞせず」
「奥様の為に生きる」
「身体も養生するのですね」
「そこまでの人物です、奥様の再婚相手にしても」
 それに迎えてもというのだ。
「問題ないでしょう、ですから」
「彼を奥様の再婚相手に」
「そうすべきですか」
「先代の死から三年置いて」
 故人それも主だった人の意志は守ってそのうえでというのだ。
「そうしましょう」
「わかりました」
「後見人の貴方がそう言われるなら」
「私共も反対しません」
「それでは」
「しかし」
 ここで宮田家の人のうちの一人が言ってきた。
「何故貴方が後見人になったのかわかりました」
「今回のことで、ですか」
「はい、最初は何故他の家のそれも離れた新潟からまだ若い貴方が後見人として招かれたのかわかりませんでした」
 そうだったというのだ。
「私は、ですがこれまでの働きぶりと今回のことで」
「そのことがですか」
「わかりました、実によいお考えです」
 感服、そのものの言葉だった。
「それではです」
「私の考えで、ですか」
「いきましょう、そしてこれからもお願いします」
 こう言うのだった、そしてだった。
 二人は結ばれることになった、その式の仲人は片平が行った。
 やがて片平も宮田家に婿養子の形で入りそれからも宮田家の為に働いた、後に彼のことは秋田に広く伝わり秋田の出来人として知られる様になった。
 昌枝と勇吉は長生きしたが彼に対して終生感謝していたという、そして片平自身も幸せに過ごした。
 秋田に伝わる話である、日露戦争前の一つの恋愛の成就の話だがその背景には色々なものがあった。そのうえで恋愛は成就するものであろうか。想いだけでなく人、家、時代、立場、倫理。そう思うとまことに恋愛とは難しいものだ。二人がどうかと思うだけで実らないものであるのだから。


未亡人   完


                   2018・5・17
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