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ダンジョン飯で、IF 長編版
序章  兄さんが食べられた:ファリン談
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さな村にあった地下墓地だった。
 ある日、地下墓地の底が抜け、奥から一人の男が現れた。
 男は、一千年前に滅びた黄金の国の王を名乗り、かつて栄華を誇ったその国は、狂乱の魔術師によって近く深く、今なお囚われて続けていると言った。
 『魔術師を倒した者には、我が国のすべてを与えよう。』
 そう言い残し、男は塵となって消えた。
 それがこのダンジョン…、地下迷宮の始まりだった。

 魔物達は、迷宮の底から湧いてくるという。
 地上に生き物が禁忌の魔術により、豹変した姿なのか、魔界から呼び寄せられたモノなのかは不明であるが、すべての魔物は奇妙な姿をしており、何かを守るように襲いかかってくる。
 しかし、それらこそ、呪われた黄金の都の存在を示す唯一の証だとされていた。

 ファリンは、壁の下側に空いた大きな穴を見つけると、中をソッとのぞき込んで確認し、杖の先にタオル巻いた。
 そしてそーっと中にタオルを巻いた杖を突っ込む。
 すると、ガチンッと大きなはさみがタオルを巻いた杖を捕えた。
 そしてズルズルとゆっくりと、引き抜かれた大サソリを、ナイフで仕留めた。
「ザリガニみたいに採らないで…。」
「大サソリはね、まずハサミで獲物を固定してから尾の神経毒を打ち込んでくるの。しかも餌が無くても刺激すれば釣れるから、ザリガニより簡単。」
 死んだ大サソリの尾を掴んで持ち上げ、誇らしげに言うファリンに、マルシルが呆れていた。
「あのな…ファリン……、もしかしてだけど、おまえ、前々から魔物を食べる機会を伺ってただろう?」
「……だって、兄さんが食べてみたいって言ってたから…。
 チルチャックに言われ、ファリンはそう言い、そして顔を赤面させた。
「で、でも兄さんを助けたいって気持ちはあるよ!」
「はいはい…。」
「兄さんから魔物の話を聞いたり、本を読んだりしてて…思ったの……、どんな味がするんだろうって…。」
「サイコパスだ。」
「兄さんも食べたらどんな味がするんだろうって、言ってた。」
「サイコパス兄妹だ。」
「さいこぱすってなに?」
「あーあー、いいのよファリン。気にしないで。」
「そう?」
 コテッと首を傾げて微笑むファリン。その手に、歩きキノコと、大サソリを持っているのでなんともシュールだ。
 マルシルとチルチャックは、顔を見合わせてため息を吐いた。
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