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駅にて
第一章

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                駅にて
 吉川郁美は写真部の部室で二年の男子の先輩の一人が自分に熱く語る会話を眉を顰めさせて聞いていた。
 先輩はとかくだ、自分が撮りたいものについて語るがその撮りたいものが彼女にとっては眉を顰めさせるものだったのだ。
「あの、先輩」
「何だ、吉川君」
「先輩の撮りたいものって」
「浪漫だ」
 先輩は郁美にきっぱりと言い切った。
「漢のな」
「あのですね、体操服の半ズボンから浮き出る下着のラインとか透けて見えるブラとか」
「制服でもな、そしてハイソックスとミニスカートや半ズボンの間のだ」
「絶対領域ですか」
「横から見える胸のライン、うなじに腋そしてミニスカートのぎりぎり、胸元もいいな」
「全部撮って公に出来ないですよ」
 こう先輩に言うのだった。
「何ていうかですね」
「盗撮だというんだな」
「はい、先輩そんな人だったんですか」
「安心しろ、私はこうしたものは浪漫だと思うが」
 それでもというだ、先輩は自分を咎める目で見ている郁美に胸を張って答えた。
「撮ると流石に犯罪と言われかねないしな」
「実際にそうじゃないですか?」
「撮らない、私がそうしたもの以上に浪漫を見ているのは鉄道と飛行機、そして兵器だ」
「兵器って言うと自衛隊ですね」
「我が国だとな、だから時間を見て陸空海の自衛隊の基地に行ってだ」
 そうしてというのだ。
「撮ってもいるぞ、事前に確認を取っていれば中に入られるし基地の外から飛行機や船を撮ってもいい」
「意外と自由なんですね」
「何なら君も来てみるか」
「体操服から見える下着のラインより遥かにいいですね」
 郁美は先輩にあえて嫌味というか咎めるものを込めてまずはこう返してそこからさらに話した。
「そうしたの撮ったら本当に警察ものですよ」
「だから撮らない、心の浪漫に止めておく」
「はい、私にお話する時点でアウトですし」
「私は己を隠さない」
「全部さらけ出したら軽蔑されますから」
 また突っ込みを入れた。
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