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石頭
第二章

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「頼んだじゃ」
「まあ仕方ないな」
「あんたも孫に嫌がらせを受けたらな」
「あの連中のタチの悪さを考えると」
「仕方ないって言えば仕方ないさ」
「わし等だってああしたろうさ」
 街の者達も言う、その彼等の話を聞いてだった。
 吟次は仕方ないといった顔で彼等にこう言った。
「仕方ない、それじゃあな」
「それじゃあ?」
「それじゃあですか」
「あっしがその連中を何とかしよう」
 街のならず者達をというのだ。
「賭場だけでいいだろうにショバ代までせびるなんて欲をかき過ぎだ」
「だからですか」
「連中を何とかしてくれますか」
「そうしてくれますか」
「全く、あっしはどうしてこうなるのか」
 自分でも嫌になることだったのでそれで言った。
「いつも、しかしな」
「しかしですか」
「それでもですか」
「こうなったら仕方ない」
 これまたいつもの言葉だった、そのうえで。
 ならず者達が仕返しに来るのを待った、すると一刻程で先程の柄の悪い連中が先頭に立って案内してだ。
 三十人位のならず者達が出て来た、その真ん中には大柄で随分と人相の悪い派手な服の中年男がいた。
 その男がだ、先程吟次が退けたならず者達に問うていた。
「ここにいたんだな」
「へい、そうです」
「随分大柄でがっしりした奴です」
「不細工な間抜け顔をした奴です」
「それはあいつか」
 外にいる吟次を見ての問いだった。
「そうかい」
「あっ、あいつです」
「間違いありません」
「あいつですよ」
「そうか、本当に間抜け顔だな」
 男も吟次を見て頷いた。
「これは酷い、おい」
「あっしにかい」
「そうだよ、手前にだよ」
 男は吟次に対して言葉を返した。
「言ってるんだよ」
「あっしが娘さんに言い寄って嫌がらせをしているのを止めたからか」
「このシマは俺達のもんだ」
 男は吟次にこうも言った。
「流れ者らしいが勝手なことをした落とし前つけさせてもらうぜ」
「そう言うがショバ代まではいかんだろう」
 賭場の金ならいいがというのだ。
「そうじゃないのか」
「だからここは俺のシマだって言ってるだろう」
「天下の場所にそんなものがあるのか」
 将軍ですら寝て一畳、起きて半畳だと言っている。それでここが男のシマである筈がないというのだ。
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