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永遠の謎
12部分:第一話 冬の嵐は過ぎ去りその六

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第一話 冬の嵐は過ぎ去りその六

「しかしドイツのものにはドイツのよさがあります」
「ドイツのか」
「そうだというのね」
「何時か必ず」
 そして言った。この考えをだ。
「ドイツに見事な音楽家が現れるでしょう」
「ベルリーニやドニゼッティの様なか」
「ロッシーニかしら」
「いえ、彼等を超えるでしょう」
 まだ見ぬその音楽家についてだ。彼は熱く語るのだった。
「その彼は」
「一体どんな音楽家なのだろう」
「わかりませんね」
 両親は息子のその言葉に首を捻ることになった。
「しかしドイツにもな」
「必要ですね」
「神聖ローマ帝国はなくなった」
 王はこのことを言う。ナポレオンにより解体させられたその国のことをだ。
「だがオーストリアとプロイセンは争っている」
「そうですね。それは」
「そしてどちらかがだ」
 王の言葉は続く。
「ドイツを一つにするのか」
「おそらくですが」
 太子はいささか物憂げな顔になって言った。
「プロイセンでしょう」
「プロイセンか」
「その勢いは止まるところを知りません」
「だからだというのだな」
「そうです」
 まさにそうだというのである。
「ですから。プロイセンが必ず」
「このドイツを統一するか」
「そう思います」
「ううむ、そうなるか」
「そしてです」
 さらに話す彼だった。
「ドイツにその音楽家がです」
「ロッシーニを超えるか」
「モーツァルトやベートーベンに匹敵するでしょう」
 こうまで話してだった。太子は今日の歌劇を観た。それはイタリアのものである。それを観てだ。彼はドイツのその偉大な音楽家を夢見るのだった。
 そしてだ。その時にだった。
 太子は大叔父の家を訪問した。そこでだった。
「叔父上、それでなのですが」
「何かあるのか?」
「叔父上は音楽の評論を読まれていると聞きましたが」
「その通りだ」
 それは否定しない叔父だった。
「それはな」
「そしてなのですが」
「その評論を読みたいのか」
「できれば」
 こう叔父に申し出る。
「宜しいでしょうか」
「いいとも。それでなのだが」
「それで?」
「一人面白い音楽家の評論を読んでいる」
「面白いですか」
「かなり斬新な音楽家だ」
 叔父は甥に対して話す。
「その主張はな」
「それでどういった評論ですか?」
「音楽の中の女性的なるものか」
 叔父はいぶかしむ顔になり話をする。
「そんなことを言っている」
「女性ですか」
「そうだ、女性だ」
 こう甥に対して話す。
「それがあるというのだ」
「そうなのですか。女性的なものですか」
「そしてその音楽だが」
 音楽についてもだ。話すのだった。

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