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永遠の謎
110部分:第七話 聖堂への行進その十七
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第七話 聖堂への行進その十七

「穏健にですか」
「ここは」
「そうです、陛下のお気持ちを害することはあってはなりません」
 王への忠誠がだ。彼にそう言わせているのだった。
「ですから。彼にあの生活をあらためるようです」
「そうして陛下への援助の無心もですね」
「それも謹んでもらうようにですね」
「そういう風に」
「はい、そうしてはどうでしょうか」
 男爵はこう周りに話すのだった。
「ここは」
「そうですな」
 彼等の中で一際厳しい顔の男も言ってきた。
「ここはそれがいいのでは」
「ブフィースターマイスター首相」
「卿もそう思われますか」
「はい、今はそれでいいでしょう」
 彼は今はというのだった。そこに彼の考えがあった。
「それで彼が行いをあらためればです」
「とりあえずはそれですか」
「まずは」
「はい、それで落ち着けばよし」
 これがその彼、首相の考えであった。
「ですがそれで行いをあらためなければ」
「その時はですか」
「最後の手段ですか」
「何もこのバイエルンから追放するというのではありません」
 首相もそれは否定した。そこまでは考えていないというのだ。
「ただ。陛下の御傍にいるのはです」
「あまりにも酷いとそれはですか」
「許せないと」
「そうだというのですね」
「そういうことです。それが最後の手段です」
 首相はそれを最後とした。そして彼もまた、だった。
「陛下は。彼の芸術があればそれでいいと言われるでしょう」
「本人ではなく芸術が」
「そちらがですか」
「はい、そうです」
 これが首相の見たところであった。しかしであった。
 彼は見誤っていた。王が彼についてどうした感情を抱いているのか。それを見誤っていた。しかもそれでいて王への敬慕が強かった。
 その為にだ。彼は言うのだった。その敬慕のままに。
「ですから。陛下のお気持ちを害さずにです」
「彼の問題をどうかするのですね」
「ここは」
「そうした意味で男爵のお考えに賛成です」
 ここまで話して男爵に顔を向けたのだった。
「そういうことです」
「左様ですか、それでは」
「今は」
「はい、そうします」
 こう話してであった。そのうえでだ。
 首相と男爵はだ。お互いに手を出し合ってだ。そのうえで握手をするのだった。
「男爵、それでは」
「首相も」
 二人は今盟友となったのであった。それを確かめ合いながらまた話す。
「陛下の為に」
「このバイエルンの為に」
 あくまでだ。彼等に私はなかった。公、そして忠があるだけだった。
 それは確かだった。だが、だった。
 やはり彼等はわかっていなかったのだ。王のことをだ。彼を理解することはあまりにも難しかった。その繊細さと醒めた中にある情熱
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