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緑の楽園
第一章
第11話 卒業
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点にもなり得てしまうわけだけどね」

 二番でも三番でも大丈夫です。ビリに近いところだって大丈夫です。ナンバーワンでなくても良いし、オンリーワンでなくても良いです。
 自分でもそんな性格なのだろう思っている。が、やはり同意を求められているわけではないと思ったので、特に答えなかった。

「しかし、よく考えたら……だ。この世に『優秀だ』と言われる人間に育つ者など、全体の一割程度だろう。あとは凡人だ。どんなに厳しい環境の国であろうが、そこで育つ人間たちの中で、凡人グループが少数派になることはないだろう」

 なるほど。確か「優秀一割、凡人九割」だっただろうか。他にも「2:6:2の法則」や「20:80の法則」なども、元の世界で聞いたことがあったような気がした。
 町長はそのような類のことを言っているのだろう。

「だから、凡人になることが通常の道であり、それに合わせて社会が回っているという君の国は、結果的に一人でも多くの人間を救える仕組みになっているのかもしれない。
 一人でも多くの人間を救う――それは我々の国の政治でも、最も大切にしなければならないことだ」
「……」

「それに、君がそちらの国の標準的な人間であるのだとしたら、君の国は、たいへんに魅力的な凡人を量産していることになる」
「……」
「そうやって考えていくとな。実は、君の国はとてつもなく素晴らしい国なのかもしれない、そう思うのだよ」

「ちょっと過大評価かもしれませんよ?」
「ははは。まあ、私個人の感想だ。私は君を気に入ってしまっていて、客観的に評価できていない可能性もあるから、気にしないでくれたまえ。
 だが、孤児院の子供たちだって、君によく懐いていたみたいじゃないか? 子供の目というのは、時に大人よりも正確だぞ」

「子供たちですか。毎日いじられまくってきましたけど」
「ははは。好かれている証拠だ」

 ……町長の目の光が、いつもと少しだけ違う。

 いつもは厳しさと優しさを合わせた光。
 そして今は、優しいけれど、少し遠い光だ。
 これから俺が何を言い出すのか、もうわかっているということなのだろう。


 俺は町長に、「この町を出ます」と告げた。
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