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戦闘携帯への模犯怪盗
STAGE2-1:いらっしゃいませ、私の宝を頼みます。
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た。『意地悪姉さんがいい顔してよりを戻そうとしても、シンデレラ姫には迷惑なだけでしょ?』って……私は謝って仲良くできればと思っていたんですけど姉の言う通り、私が彼女に何を言ってもあの子を傷つけるだけなのでしょうか……」

 肩を落とすアネモネ。グルービー警部は少しの間悩まし気に考えた後、懐に手を入れる。

「ご心配なくアネモネさん。アローラ警察は住民のトラブルも解決いたします。怪盗騒ぎが終わったらぜひご連絡を」

 グルービー警部は名刺をアネモネに渡す。彼女が受け取ると、仄かにハーブの香りがした。緊張をほぐすそれにアネモネの表情が、明るくなる。

「大丈夫です。私にはリュウヤがいてくれますから……怪盗さんのことも、主人が捕まえてくれると思います」
「あれ!? いや、私らの存在意義は!?」
「警戒の手間が減るから一応呼んでくれ、と言われまして……」

 正直なアネモネにガクッ!とよろけるグルービー警部。
 よろよろと立ち上がり、警部が聞く。

「そういえば、彼はどこに?」
「リュウヤなら店の屋根です……怪盗さんがどんな手段で来ようと見逃さないように、とのことで」
「なるほど、彼らしい……しかしこれで警備は万全ですな!外には屈強な警備員が並び立ち!内にはベテラン警部のこのグルービーが目を光らせ!何より上には冷静沈着な若き島キング様が空からくる怪盗を見逃さない!前門のライコウ後門のエンテイよりも強固な布陣!!怪盗の手を出す隙などありません!!」

 ははは、と笑いながら警部は時間が過ぎるのを待つ。時折霧吹きで喉を潤しながら。
 二時四十分、五十分、五十五分……。
 三時になっても、怪盗クルルクがやってくることはなかった。
 ほっと胸をなでおろすアネモネと店員たち。店内にどっと安堵の息が下り、外の野次馬達からはブーイングが上がる。

「ふふん、さすがの怪盗クルルクも、この鉄壁の守りを前に諦めたようだな……」
「なら、よかったです……警部さん、ありがとうございました」
「いえいえ、これがわれらの務めですから」

 アネモネが礼儀正しく頭を下げる。警部も敬礼で返した。
 そのあと、警部がためらいがちに聞く。

「……ところでアネモネさん。この店、トイレはありますかな?」
「え、トイレですか……店の中にはありませんが、二階の私の住まいなら……」 

 ジュエリーショップでは、清潔感が重視される面もあるためトイレはついていない。警部は慌てて手を振る。

「いえいえ失礼しました。怪盗も諦めたようですし、少し席を外します。そして引き上げるとしましょう」
「よろしいのですか? 時間通りに来ないことを油断させて、いなくなった隙をついてくるかも……」
「それはあり得ません。何しろ奴は『模犯怪盗』ですから」

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