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勇者たちの歴史
西暦編
第八話 リミテッド・オーバー@
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「…………ぅぉぉおおおおああッ!!」
 雄叫びを上げ、若葉が白刃を振るう。
【生大刀】――――かつてこの国の大神が振るったとされる神器を宿した刃が、バーテックスを次々に斬り裂いていく。刃先は霞むほどに加速し、一太刀ごとに白い巨体が大気に溶けて消滅する。
 何体、何十体、どれだけの敵を斬り倒しても、若葉はほとんど疲労を感じなかった。
 身体は羽のように軽く、刀は手足の延長のように扱える。二年前は朧気だった感触が、今は実戦の中ではっきりと掴むことができた。
 これが―――――勇者の力。
「このぉ! 勇者、パ――――ンチ!!!!」
「負けない……お前たちは、一体残らず殺す……ッ!!」
 若葉の背後でも、仲間たちの戦う音が聞こえてくる。
 友奈も千景も、今のところは危なげなく戦っていた。
 友奈の武装は、両手に付けた手甲。武術を修めていたという彼女は、近接戦闘を主体としている。それ故に、若葉たちの中では最もリーチが短く、集団戦では不利に回りやすい。
 その友奈の不得手を、千景が上手く補っていた。
 精神的な余裕がないのか、動きは他の二人よりはぎこちないものの、鎌という武器の持つ、長いリーチと広い攻撃範囲を十分に活かした立ち回りで、多方向からの攻勢に対処しきれない友奈の負担を減らしている。
 ……連携訓練の成果が出ている。
 確かな実感を得ながら、若葉の表情は曇ったままだ。
「はぁ……はぁ……、若葉ちゃん、これ……全部倒さないと、いけないんだよね!?」
「……あぁ、そうだ。この閉じた空間にいるバーテックスを全部、あと五分の内に倒し尽くさなければならない!」
「……無理よ。時間があれば、ともかく……あと五分で、この数を倒すなんて」
 若葉の返答に、千景が大鎌で斬りつけながら吐き捨てる。
 彼女の気持ちは、若葉にもよく理解できた。
 視界を阻む白い壁。どれだけ打ち倒しても穴をあけることすら困難な状況が続けば、終わりがないのではないかと思わずにはいられない。実際、この包囲網を全滅させたとしても、敵の総数に比べれば微々たるものだろう。
 それでも、
「それでも、やるしかない。冬木の人々の命は、私たちにかかっている!」
 殺到するバーテックスを倒し続けながら、若葉は吠える。
「―――――成し遂げる! どんな難行だろうと、必ず!」
 
 冬木の勇者代理を名乗る男からの要請は、大きく分けて二つだった。
 一つが、五分以内に結界内に取り残されているバーテックスを全て殲滅すること。
 もう一つが、転移してくるという冬木の住民を、四国の結界内まで護衛すること。
 その要請を聞いた時、若葉は不可能だと思った。
 今回の作戦に携わっている勇者は、若葉と千景、そして友奈の三人。
 球子と杏の二人は、四国の結界内部で待機している
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