暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜紫紺の剣士〜
アインクラッド編
15.クリスマス・イヴ
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無邪気に叩き壊してくれたお陰で。
忍び込んでくる冷気に身を震わせながら、立ち止まって俺は上を見上げた。夜の闇の代わりにあるのは、陰鬱な鉄の蓋。星の一つも輝かない。
一つため息をつき、ミーシャたちのいる宿屋に帰ろうと足を向けた、その時。
「よぉ、兄弟」
背中がぞくりと粟立つ。一瞬剣に手が伸びかけるが自制する。落ち着け、ここは圏内だ。俺は内心の動揺を顔に出さないようにしながら、声が聞こえた方向に顔を向けた。
「誰だ」
「冷たいねぇ。さっき言ったじゃねぇか、兄弟ってな」
暗がりからゆっくりと人影が出てくる。被っているフードを外す。その顔に見覚えは――――ない。
確かに俺には兄弟がいる。双子の兄と姉だ。しかし”兄弟”だという男の顔に二人の面影は全くないし、声も記憶にあるものとは異なる。
「人違いだ。他を当たれ」
「いいや、俺が探していたのはお前だよ」
鉄色の短髪男はにやりと笑い、ゆっくりと俺に近づいてくる。
「お前を勧誘しに来た」
「・・・今いるギルドを抜けるつもりはない」
「殺人をしよう」
「・・・」
俺は黙ったまま答えない。冗談にしてはたちが悪すぎる。本気で言っているのかどうかもわからない。
「この世界じゃ、法律は存在しない。ここで起きたことはすべて茅場晶彦一人の責任だ」
「それは違う。茅場は世界を作っただけにすぎないし、行動はすべて本人が責任をもって起こすものだ。俺はそんなことはやらない」
「・・・まぁ、そういうと思った」
男は再びフードをかぶり直す。
「ここで俺の誘いに乗らなかったこと、後悔するぞ」
そう言い残し、男は路地裏に消えた。
プレイヤーの反応が消えるまで待ってから、俺は深く息を吐いた。嫌な汗が背中を流れ落ちる。結局、奴の言っていたことは半分も意味が分からなかったが、取り敢えずミーシャたちに忠告ぐらいはしたほうがいいはずだ。
一刻も早く、みんなのいるところに帰りたい。


帰還後、俺が事の顛末をミーシャたちはみな一様に難しい顔をした。ミーシャは一言だけ、
「あんまり、一人にならないようにしようね」
とだけ言った。


***


外は、雪が降っている。
椅子に座っている俺たちの前に並べてられているのは、ナツが腕によりをかけたタンドリーチキンやブッシュドノエル風の料理。つまり、今日はクリスマス・イヴである。
「味付けもこだわったっスよ!召し上がれ!」
「さすがはナツだね!頂きます!」
ミーシャの声に続いて、俺を含めたほかの《夜桜唱団》の面々も次々に手を合わせ、料理に手を伸ばす。
だいぶ料理スキルが上がり、彼自身もこの世界のシステムに順応したのだろう。ナツの手料理は、とても美味しかった。


「心配?」
ふと気づくと、アンが俺の顔を覗き込んでいた。少し考え込んでいたの
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