暁 〜小説投稿サイト〜
SoA 青空に咲く、黒と金
前日譚 偽りの救世主(メサイア)
序章 「救世主」の使命
前日譚1-1
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がオレを「救世主」と呼び、誰もがオレに「救世主」になることを望んだ。だからオレはひたすらに「救世主」であろうと頑張った。ゆえに通称は「救世主(メサイア)」だ。
 今日だって。
「メサイア様―!」
 道行けばかかる声。何事かとオレは振り向いた。
 オレの視線の先にいたのは一人の娘。彼女は困ったような顔をしてオレに近づいた。
「昨日、雨降ってましたよね? それでですね、私誤って薪を家の外に置いてしまって、それで薪に火がつかなくて困っているんですよ。だから」
「解った」
 オレは頷き、彼女に「どこだ?」と問うた。彼女は慌ててオレを件の家に案内する。
 そうさ、オレは「救世主」。全てのアシェラルを救わなければならない存在ゆえに、どんなに小さなことでも頼まれれば必ずしなければならない。ああ、やってやるさ、この力の続く限り。オレはその生き方しか知らない。どんなに他の存在になりたいと願っていても、「救世主」という立場から逃れるすべをオレは持たない。だからオレは変わることを願ってはいけない。変化を望むは罪なのだ。オレは「救世主」としての以外の生き方を知らないんだから。それ以外は教わらなかったんだから。
 だからオレは今日も淡々と「仕事」をこなす。午後には族長さまからの講義を受ける。
 実際「救世主」なんてそんなものさ。全然大した存在なんかじゃない。
 それにオレの炎の力は少しばかり――破壊に向きすぎている。現実世界じゃあまり役に立たないんだ。それこそ戦争でも起きない限りは、な。

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