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戦国異伝供書
第七話 長可の修行その九
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「どうしてもな」
「はい、ですから」
「この三つの家をどうするか」
「それが当家の天下統一の為の問題となるでしょう」
「左様じゃな」
「今は確かに朝倉家をどうするかですが」
「そこから先が肝心じゃのう」
 羽柴は袖の中で腕を組んで述べた。
「全く以て」
「そうなるかと」
「では今はこの三家と戦うことも考えて」
「政に励むべきかと」
「国の力を高めて軍も養い行き来もしやすくしてか」
「すぐに大軍を向けられる様にして」
 三つの家のそれぞれの方にというのだ。
「戦える様にすべきでしょう」
「そうなるか」
「はい、今はその備えです」
「だから殿も政にお心を砕いておられるな」
「天下統一の為に」
「二十国以上、七百二十万石の大身となられても」
「天下統一はまだまだ先なので」
 信長はそれがわかっている、それでなのだ。
「政も励んでおられるのです」
「そうじゃな、ではわし等もな」
「政に励みましょう」
「天下統一の為にな」
 二人で話した、その話が終わってからだった。羽柴は弟に対してこんなことを言った。
「それでじゃが」
「はい、晩飯の時ですな」
「ここで食わぬか」
「実は女房にもそう言っています」
「わしがこう言うことはわかっておったか」
「兄上ならばと思っておりました」
 秀長は兄に笑みを浮かべて答えた。
「そう言われると」
「そうか、わしのことはわかっておるか」
「こうしたことも」
「それは何よりじゃ。それでじゃ」
「はい、これからですな」
「ねねが飯を出す、今日の飯はじゃ」
 それは何かというと。
「漬けものに轢き米の粥じゃ」
「兄上の好きなものですな」
「やはりこの粥が一番美味い」
 羽柴は笑ってこうも言った。
「やはりな、だからな」
「今宵はですか」
「それを食おうぞ」
 その轢き米の粥をというのだ。
「供にな」
「それでは」
「ずっと忘れられぬ」
「あの時のことは」
「百姓の貧しい時はな、だからこそな」
「今宵もですな」
「轢き米の粥を食おうぞ」
 秀長にこう言ってだった、彼と二人でだった。
 晩飯を食った、そうして次の日も織田家で働くが岐阜の街も他の領地の街も随分と賑やかなものになっていた。
 その街を見てだ、石田は大谷に言っていた。
「まさかと思ったが」
「殿が関所を廃されてな」
「そしてじゃ」
 それでというのだ。
「楽市楽座と言われてな」
「それでじゃな」
「商いが自由になってな」
「関所もなくなって往来も自由になってな」
「余計にじゃな」
「うむ、商人たちが活発に動いてじゃ」
 そうなってというのだ。
「どの街も賑やかになった」
「全くじゃな」
「まさかこうなるとは」
「ここまでとはな」
「いや、
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