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練習あるのみ
第二章

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「是非」
「他の方のピアノの演奏を聴いて」
「そして楽譜やその曲、作曲家の歴史を読まれて」
 そしてというのだ。
「学ばれて下さい」
「わかりました」
 確かな声でだ、ユキは先生の言葉に頷いた。それで務めて実際にピアノを演奏する時間は上限を設けそれ以上は演奏せずその分聴いたり読むことにした。
 だがついついだ、部活でもだった。
 部長にだ、こう注意された。
「相楽さん、もう」
「これ以上はですか」
「そうよ、もう充分以上に演奏しているから」
 ピアノの演奏をしているユキに言うのだった。
「だからね」
「これで、ですね」
「今日は止めた方がいいわ」
「手を休めることですか」
「そうよ、お家のレッスンでも言われているのよね」
「はい、先生にも」 
 実際にとだ、ユキは部長に答えた。
「言われています」
「だったらね」
「今日は、ですね」
「今日もね」
 部長はこうも言った。
「これ位にして」
「後はですね」
「他の人の演奏を聴いたり」
「資料をですね」
「読んで」
 部室にあるそうしたものをというのだ。
「そうしてね。今はベートーベンを弾いてるわね」
「はい」
「だったらベートーベンの生い立ちや作品のことや」
「楽譜をですね」
「楽譜は読めば読むだけ発見があるって言われているから」
 それで何度も、それこそ譜面が脳裏に浮かぶなるまで読む人もいる。そこから新たな発見を見出すのだ。
「だからね」
「それで、ですね」
「今はね」
「他の人の曲を聴いて」
「そしてね」
「読んで」
「学んでね」
「わかりました」
 ユキは頷いてだ、そしてだった。
 実際に聴いて読んだ、そうして学び。
 ふとだ、ユキはベートーベンの曲の楽譜を読みつつ部長に言った。
「あの、この曲を作曲した時は」
「どうしたのかしら」
「ベートーベンはもうですよね」
 その彼のことを言うのだった。
「耳が悪くなっていましたね」
「あっ、そうだったわね」
 部長も言われて頷いた。
「もうこの頃はね」
「まだ耳は聴こえていても」
「それでもだったわね」
「耳がね」
 まさにそれがというのだ。
「悪くなっていて」
「そうしてね」
「作曲に苦労しだしていましたね」
「自殺を考えた程だったわ」
 そこまで苦しんでいたのだ、ベートーベンは耳が悪くなっていく中で苦悩していた。作曲には耳がなくてはどうしようもないからだ。
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