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身体を怪我しても
第一章
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「こんにちは」
「今日も来てくれたの?」
「ええ。元気?」
「そうだけれど」
 それでもとだ、その娘はボロ子さんに扉を開けないまま答えた。
「まだ」
「そうなの」
「皆私のことを嫌ってそして」
「そこからは言うことないから」
 ボロ子さんは彼女が自分のトラウマに触れそうになったのを見てそこから先は言わせない様にした。
「ゲームのお話しよう」
「今日してるゲームの?」
「何のゲームしているのかしら」
「今日はゲームしていないの。ずっと本読んでるの」
「そうなの、じゃあ本のお話聞かせて」
「それじゃあ」
 その娘はボロ子さんに色々と話をした、一時間程度話すとボロ子さんに言った。
「有り難う、今日も」
「それじゃあ」
「また来てくれるのね」
「来ていいかしら」
「ええ。ボロ子ちゃんなら」
 それならとだ、ボロ子さんはその娘に答えた。
「いいわ」
「そうなの」
「また来て。私お父さんお母さんとボロ子ちゃんだけだから」
 こう言いつつも扉は開けない、それがその娘の心だった。
 ボロ子さんはこの娘が酷いいじめを受けて自殺未遂を起こしたことを知っていた、命は助かったが心の傷があまりにも酷くて自分の部屋から出られなくなったのだ。外に出たらまた誰かに何かされると思って。
 それでボロ子さんはその娘の話をずっと聞いていた、自殺未遂で病院に担ぎ込まれた時も話を聞いてすぐに駆け付けて毎日見舞いに来ていた。
 だがいじめのことは気付かなかった、そして今彼女の心の傷即ち怪我のことを思ってだ。
 自分の身体を見てだ、こう言うのだった。
「これ位何でもないですから」
「そうなの。いつも怪我をしているのに」
 その娘の母親も言うのだった。
「いいのね」
「お気遣いなく」
 ボロ子さんは笑って返事をした。
「このことは」
「そう言ってくれるのね。それで来てくれるから」 
 だからだというのだ。
「あの娘も喜んでくれるわ」
「だといいですが」
 ボロ子さんはこのことは自信がなかった、あの娘が本当にそう思ってくれているのか。だがそれでもだった。
 その娘の心の傷のことを思ってだ、自分も心を痛めた。そのうえで彼女の家を後にした。明日また来て彼女と話をしようと思いながら。それが彼女の心を少しでも癒すことが出来ればと話思って。
 だがボロ子さんはこのことを誰にも言わない、そうしてだった。
 今日も怪我をして身体に包帯を巻いていた、だがそれでも言うことは同じだった。
「身体の怪我、それもこれ位何でもないから」
「死なないから」
 微笑んでさえ言うのだった、そんなボロ子さんを見て皆は本当に大丈夫なのかと思う。だがボロ子さんだけは笑っていた。その笑顔の奥にある後悔と悲しさは隠して。


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