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真田十勇士
巻ノ百四十九 最後の戦その十

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「共に」
「そうです、そのうえで」
 まさにと言うのだった。
「今もです」
「ここで死ぬつもりはない」
「そうだね」
「ではこの度も」
「死なずにだね」
「闘いまする」
 伊佐は笑みを浮かべ無明に応えてだ、そうしてだった。
 二人の勝負を続けた、そうしているうちにもだった。
 一行はさらに進む、すると次は城壁の上に道化がいて言った。
「ここは悪いが」
「先には通さぬ」
「そういうことで」
 軽いがそこには無二を言わせない強さがあった。
「宜しく」
「宜しくと言われてはいそうですかってなるか」
 由利が出て言ってきた。
「残念ながらな」
「それじゃあわしをか」
「ああ、逆にわしが止める」
 幸村達を足止めしようとする彼をというのだ。
「覚悟しろ」
「やれやれと言うべきか、いや」
「そうも言えないな」
「真剣勝負になるな」
「その覚悟は出来ているな」
「だからわしもここにいるんだよ」
 その軽い調子で応えた道化だった、だが。
 それでもだ、その顔は真剣でだった。
 構えを取ってだ、由利にあらためて言った。
「やるか」
「ああ、今からな。では殿」
 由利は幸村に目だけ向けて自身の主に話した。
「ここはです」
「頼むぞ」
「それでは」
 こうしてだった、幸村はまたしても先に向かった。そうして念動力を使い仕掛けてきた道化に対して。
 鎖鎌を使って闘う、道化は念動力だけでなく重力も使うが。
 その彼がだ、こう由利に話した。
「面白い闘いになりそうだが」
「それでもか」
「あんた見てるとな」
「わしをか」
「ああ、随分晴れ渡った顔だな」
 由利の鎖鎌の分銅、あまりもの速さで繰り出すので何十にも見えるそれをかわしながらそれで言うのだった。
「一点の曇りもないな」
「それか、言われてみれば曇った思いなんてな」
 由利は道化にさらに攻撃を仕掛け彼が繰り出す石の雨を避けつつ応えた。
「なかったな」
「真田殿の仕えてからか」
「ああ、一度もな」
 それこそというのだ。
「なかったな」
「真田殿にお仕えすることはか」
「こんないいことはないからな」
 だからだというのだ。
「わしの心はいつも晴れだ」
「だからその顔か」
「そうだろうな」
「成程な、しかしな」
「しかし?」
「それはわしもだな」
 自分もと言う道化だった、由利が近寄ってきて鎌で切ってきたがそれは自身が持っている杖で防いでみせた。
「わしにしてもな」
「晴れ渡っているか」
「半蔵様にお仕えしてな」
 それからというのだ。
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