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ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第三部 原作変容
序章 新朝始歌
第二十六話 夫妻愛憎
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者と内心では見放しておりましょう。元々あの王子はアンドラゴラス王に叱責ばかりされておりましてな。私どもも将来が思いやられると頻りに噂していたものでございました。おまけに、アトロパテネの戦い、その後のペシャワール城塞への逃避行では相当怖い目を見たのでしょう。もはやあの王子は腑抜けも同然。恐れるにたりないでしょう」

「なるほど、よく判った。下がるが良い」

「ははあっ」

俺はこの男を下がらせると、長椅子に体を投げ出した。自然と笑みが漏れる。

「フッ、フフフフフ、そうか、王太子は腑抜けか。それは好都合だ。ナルサスとやらがいようと王太子が使いこなせないのでは意味はあるまい。黒衣の騎士がいようと所詮は匹夫の勇、戦場全体までは左右できまい。そして、もはや銀仮面卿もいない。アンドラゴラス王を殺す障害はもはや存在しない。聖職者どもが多少騒ぐかもしれんが、ボタン亡き後の聖職者どもなど、どうにでもなる。もはや脅威ではありえない。アンドラゴラス王を殺せばもはやパルスは満足な抵抗など出来まい。この機に一気にパルス全土を手中に収めるとするか!」

そのとき、ちょうど扉がノックされ、兄が私を呼んでいるとの連絡が入った。どうやら兄も、銀仮面卿が死んだとの情報を何処かから掴んだようだ。

「フフフ、タハミーネめ、我らを混乱させるため、アンドラゴラス王を首を要求していたが、実際に目の前に本当にその首級が置かれたらどのような顔をするであろうな?今から楽しみだて。ふははははは!はーっははははははは!」

私は久し振りにイアルダボート神に感謝の祈りを捧げつつ、兄の部屋へ急いだ。

◇◇

ヒルメスの死から一夜明けたパルス暦320年12月13日昼間。再びキシュワードの部屋にて軍議が開かれた。アルスラーンの両脇に控えるダリューンとナルサスはひどく不機嫌な表情だ。昨夜、ヒルメスの配下に、ヒルメスの遺品を引き渡したときの、アルスラーンの余りの醜態に腹を立てているのだろう。

昨夜のあのアルスラーンは、実は本人ではない。諜者特有の幻術でアルスラーンに化けたフィトナだった。俺の演技指導に従って、あのような醜態をまさに演じたのだが、どうやらこの二人にはお気に召さなかったようだ。昨夜は終始苦虫を噛み潰したような表情でアルスラーンを演じるフィトナを睨んでいたからなあ。お陰で向こうにはきっと演技を越えた真実として違う意味に伝わったことだろう。好都合だったな、わはははは。おっと、内心がダダ漏れだったか、ダリューンに睨まれた。自重しよう。

「で、ラジェンドラ王子。お主が陛下から聞いたと言う話は他にも何かおありなのでしょうかな?その内容如何によっては今後の我々の取るべき選択肢も変わってくる。是非ともお教え頂きたいのですが?」

そう問うてくるナルサスの眉間にも相変わら
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