暁 〜小説投稿サイト〜
繰リ返ス世界デ最高ノ結末ヲ
05.猫達は人狼ゲームをするそうです。
第6回 過去を語ろうと思います。私が未だブラコン要素があった頃のお話です。
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 葉月にぃの手に因り、白猫幹部の座から下ろされてから早1ヶ月。既に、新しい幹部が私の座っていた所に座っていて、もう戻れないと言う現実を、私に叩き付けている。

 廊下を歩いて居ると、向こうから見慣れた黒髪。葉月にぃだ。
「葉月にぃ………」
「は? 何言ってんだよ。『役立たず』が、俺の事『葉月にぃ』だって?」
 急に葉月にぃは私の髪を掴み、それを思いっ切り引っ張る。痛い、と言うことは出来ず、ただ黙っている事しか出来なかった。

「テメェは最下級構成員にも満たない、ただの実験体だ。名前を呼ぶなら『黒華幹部』。つーか、そもそも、俺に話し掛ける事自体有り得ねぇんだよ」

 そう。幹部だった私は、此奴には能力が無いと疑われ、幹部を辞めさせられた。その後、葉月にぃの手に因って、白猫が秘密に行う実験の、実験体にされた。

 でも、私に能力はある。ただ隠しているだけで。
 私が能力を隠す理由。それは、余りにもこの能力が強力だったからだ。一度見て、その能力を理解すると、その能力を複製して、自分でも遣うことが出来るのが私の能力。既に白猫の全ての能力を遣うことが出来る。

 今日も実験体として与えられた、薄汚れた部屋の端で、膝を抱えて座って、実験を待つ。
 ところが、今日は実験では無かった。
「オイ、今日は幹部達の訓練で、お前を使うことになった。さっさと出ろ」

 枷に付けられた鎖を引っ張られつつ、私は白猫のトップクラスの人間が集まる部屋に到着する。その中には勿論葉月にぃも居て、此方を冷たい瞳で睨み付けている。
 鎖を外され、枷は有るものの、少し楽になった手を動かす。そう言えば、ここに来るのも久し振りだったな。

「今日は少し、思考を読むための訓練として、『人狼ゲーム』という遊びをやってみようと思う」

 首領がそう言うと、補佐の人がゲームの説明を始める。そして、終わったハンドサインを教えたり、カードを配ったりしている。
 だが、それすらも怖くて、私は俯いているだけ。配られたカードに描かれていたのは、市民の絵。市民達のために死ぬだけの役職。

 話し合いが始まった。でも、私は喋らない。喋ってはいけない気がしたから。それに、葉月にぃにまた怒られる。
 周りの様子をジッと見て、只管観察為たり、推理為たりする。会話の内容や、表情、筋肉の動きから、直ぐに誰が人狼なのか分かったが、どうせ私の話は聞いて貰えない。もう、私が必至に磨いた人間観察を生かす方法も無い。

「如何為た。君、1つも喋って居ないね」
「あのっ………」
 人狼が誰か、考えてて。そう声を繋げようとしたが、それは葉月にぃに因って妨げられる。

「此奴が居ても、話し合いに参加しないんじゃ意味無いですよ」
「………そうか。じゃあ、今日は君を処刑する事にするよ」

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