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麗しのヴァンパイア
第五十五話

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第五十五話  吸血鬼の手紙
 カーミラは己の屋敷の中で悠然として己の使い魔達に言った。
「気が向いたわ」
「だからですか」
「これよりですか」
「ええ、手紙を書いてね」
 そしてというのだ。
「その手紙を二人のところに送るわ」
「そうしてですか」
「そのうえで」
「勝負をするわ」
 それを楽しむというのだ。
「しうするわ」
「そうですか、いよいよですね」
「近頃ご主人様は神戸の街をお楽しみでしたが」
「散策にお食事に」
「そして遊興にと」
「そうしたものの楽しみが一段落したからよ」
 それでとだ、カーミラは使い魔達がグラスに入れてくれたワインを飲みつつ言った。それは赤いスパークリングワインだった。
「だからよ」
「それで、ですね」
「今はそちらの楽しみを中断されて」
「そのうえで」
「お二人との勝負にですね」
「入るわ」
 そうするというのだ。
「これからね」
「それでは我等も」
「及ばずながら」
「貴方達がいてこそよ」
 カーミラは自身を護り慕う様に囲んでいる使い魔達に真剣な声で言葉を返した。
「私は何か出来るのよ」
「いえ、滅相もない」
「その様なお言葉はあまりにも恐れ多いです」
「そこまでのお言葉は」
 使い魔達の方が謙遜した、カーミラの今の言葉には。
「むしろです」
「我々を使って頂くだけでも有り難いです」
「是非お使い下さい」
「それこそが我等の望みです」
 これが使い魔達の返事だった、それでカーミラにも言うのだった。
「ではです」
「これよりですね」
「お手紙を書かれるのですね」
「ええ。優雅な宣戦布告を行うわ」
 この言葉を優雅に言うカーミラだった、そしてだった。
 手紙を書いて自ら郵便ポストに入れて微笑んだ。
「切手も貼ってあるわ。これで後は返事を待つだけだわ」
 この時の笑顔も優雅なものだった、そうしてこの日はその足で神戸のレストランに行き食事を楽しんだ。血の滴るステーキを。


第五十五話   完


               2018・5・30
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