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ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第一部 原作以前
第二章 対パルス使節団編
第六話 烈剣黒豹
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たのは、母が死んだ後何も手につかず、何も食べる気が起きずに、母の事を想い出しては泣き暮らしていた頃の事だった。

「君がインディラのお子さんだね?私は君のお母さんが働いていた屋敷の主人の親戚、つまりはお母さんの知り合いだよ。…む、イカンな。痩せ過ぎているではないか。ちゃんと食事を取っているのかね?」

「いいの…。このまま何も食べないで死ぬ…。そうすればお母さんにまた会える…」

「馬鹿な!そんな事でお母さんが喜ぶとでも思うのか!…いや、怒鳴ってしまって悪かったね。ねえ君、人間はね、死後の世界で親に会ったら、たくさんたくさんおみやげ話をしてあげなきゃいけないんだよ?」

「おみやげ…ばなし?」

「そう、おみやげ話だ。悲しい事や辛い事もあったけど、我慢して乗り越えてちゃんと幸せになれたよって。誰かの役に立てて、誰かに喜んでもらう事が出来たよって。嬉しかった事や、楽しかった事、誇らしかった事がたくさんあったよって、そう言う事を親に伝えなければならないんだよ。それが出来るようになる前に死ぬなんて親不孝もいいところだ。君はお母さんよりももっともっと長生きして、たくさんのおみやげ話が出来るようにならないといけないよ。その為にも君は私の所に来るべきだ。私は君を幸せには出来ないかもしれないけど、幸せになる手助けはしてあげられるはずだからね」

そうして私はマヘーンドラ様のお屋敷に引き取られ、下働きをするようになった。一緒に働く人達は皆優しかったし、マヘーンドラ様も私の事を何かと気にかけて下さった。そんなマヘーンドラ様のお役に立ちたくて、私は諜者の様な仕事もするようになった。そんな危ない事をしなくてもいいと心配されもしたけど、よくやってくれた、助かる、ありがとうとも言って下さるようになった。嬉しかったし、誇らしかった。

マヘーンドラ様はいつも、「この国に暮らす人が少しでもより幸せに生き延びる事が出来るようにしたい」と仰っていた。そんなマヘーンドラ様の為に働ける事が何より幸せだった。マヘーンドラ様はもしかしたら自分の父親なのではないか、そう考える事もあった。でも、そうであったら嬉しいけど、別にそうでなくても構わないとも思っていた。例えそうでないとしても私はマヘーンドラ様に充分に幸せにして頂きましたから。


ラジェンドラ殿下のお蔭で私はマヘーンドラ様が自分の父親だと知る事が出来た。しかし、殿下は一体どう言う人なのだろう。それまではガーデーヴィ様が王太子に決まっても次の王様になる望みを捨てようとしない、未練がましい人。平地に乱を起こしかねない危険人物。そう思っていたのだけど、本当は違うのだろうか。

もしかしたら殿下は諜者を使う事で、人より多くの事を知り、人より多くの事を考え、人より多くの事に心を配っている。そんな人なのではないか。と言
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