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戦国異伝供書
第二話 百姓の倅その九

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「明らかに」
「はい、誰がどう見ましても」
「しかしじゃ」
「それをですな」
「何とか覆さねばな」
「我等は今川家に降るか」
「滅びるしかないわ」
 どちらかの道しかないというのだ。
「最早な。しかし殿はな」
「動かれませぬな」
「何をお考えか。しかしな」
「我等はあくまで」
「殿と共にじゃ」
「いましょうぞ」
 織田家の者達は誰も信長の下を去ろうとしなかった、それは木下も同じで秀長に対して言うのだった。
「さて、いよいよ今川家との戦じゃが」
「それでもですか」
「殿は勝たれるぞ」
「必ずですな」
「そうじゃ、殿ならばな」 
 信長の資質を知っているが故の言葉だった。
「勝たれる、そしてな」
「そのうえで」
「我等は危機を乗り越えられるぞ、そしてわしもな」
「この度の戦では」
「機会があればな」
 その時はというのだ。
「大きな働きをするぞ」
「そうされてですな」
「また名を挙げるぞ」
「そのこと期待しておりまするぞ」
「是非な。今川家には太源雪斎殿がおられるが」 
 義元の師であり今川家の柱と言っていい高僧だ、政も戦も彼が義元を助けて今川家を動かしている。
「織田家には雪斎殿に負けぬ御仁がこれでもかと揃っておる」
「その中には兄上も」
「ははは、わしは下っ端。しかしな」
「雪斎殿に負けぬ働きをですか」
「したいのう」
「では機会があれば」
「働いてみせるぞ」
 こうした話をして信長に砦に入れと命じられていたのだ、そして砦では。
 丸根と鷲津の二つの砦を動き回り連携を上手にした、そのうえでどちらの砦にも幾重にも仕掛けをした。
 そうして今川の兵達と戦った、その中で彼は兵達に言っていた。
「ここを守りきればな」
「はい、褒美はですな」
「思いのままですな」
「そうじゃ、褒美が欲しいであろう」
 足軽達に笑顔で言うのだった。
「是非共」
「無論です」
「戦に出たならです」
「それが欲しいものです」
「それは当然ですな」
「ならばじゃ、頑張って戦ってじゃ」
 そうしてというのだ。
「生きよ、よいな」
「わかり申した、それではです」
「我等戦い手柄を立てて生きます」
「そうしますぞ」
「そうせよ、勝ってそしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「お主達も身を立てるのじゃ」
「そうさせて頂きまする」
「敵の数は多いですが」
「それでも」
「ははは、数が多いならそれだけ手柄も多いぞ」 
 つまり得られる首が多いというのだ。
「だからな」
「手柄を立てる為にも」
「思う存分戦うのじゃ」
 こう言ってだ、そしてだった。
 木下は兵達を励ましそのうえで自らも二つの砦への細工を徹底させた、そのうえで今川の先鋒である家康の三河兵達と戦った。
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