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哲学者は静かに思索する
第一章
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               哲学者は静かに思索する
 テメガノは人間ではない、多くの触手と顔にある単眼が目立つラグクラフト的な種族の者の一人である。
 この種族は人間達からの迫害を逃れる為に今は山奥にひっそりと隠れて暮らしている、人間が誰も入らない様な世界に。
 だが最近人間達の文明の進歩を見てだ、こんなことを話していた。
「ここはどうするか」
「もう地球にいたら駄目か?」
「人間達はやがてここに来るぞ」
「そうなるだろうな」
 彼等はこうした話をしだした。
「だからだな」
「何処かに逃れるか」
「海の底に街を造るか」
「それとも地の中にか」
「宇宙に逃れるか」
「宇宙船を建造して他の星に逃れるか」
「我々の技術なら可能だしな」
 こうした話をしていた、その話を聞いてだ。
 テメガノは難しい目になってだ、こう呟いた。
「知能があれば悩みは尽きないのである」
「またそう言うのか」
 よく一緒にいるテメガノの友人はその彼に問うた。
「知能があればか」
「そうである」
 テメガノはその目を友人にも向けて答えた。
「そこから悩みは生まれるのである」
「だから今もかい」
「我々は悩んでいるのである」
「これからどうするか、か」
「吾輩もこう思っているである」
 こう前置きしてだ、テメガノは友人に自分の考えを話した。彼等の街の中にある大学のキャンバスの中で。大学も他の建物も彼等の身体に合わせたもので人間達が住む場所とは全く違うものになっている。
「人間達はやがてである」
「我々をだな」
「発見するである」
「人間はあちこちに来ているからな」
「だからである、遅かれ早かれ」
 何時になるかわからないがというのだ。
「我々はここに留まっていればである」
「人間に見付かってしまうか」
「そうなれば大事である」
「化けものと言われてな」
「攻められるである」 
 テメガノはこのことについても難しい目で語った。
「そうなるである」
「そうならない為にもか」
「我々はここを去るべきである」
「君もそう思うか」
「そしてである」
「何処に逃げ込むかだな」
 友人はテメガノに応えて言った。
「海の底か地の底か他の星か」
「違うである、吾輩はそこは考えていないのである」
「何処に逃げるべきかはかい」
「それは考えていないである」
 こう友人に語るのだった。
「考えているのは悩みである」
「このこと自体かい」
「そうである、先程も言ったであるが」
「知能があればその時点で」
「生物は悩む様になるである」
「それはどんな生物でもかい」
「そうである、若し僅かでも知能が生じれば」
 それでというのだ。
「そこからである」
「生物は悩むのかい」
「何処に行くべきか」

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