暁 〜小説投稿サイト〜
ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第一部 原作以前
序章 シンドゥラ編
第三話 無双勇者
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
バハードゥル。鮫と同じ様に痛みを感じる事が無く、故にどれ程の傷を受けても倒れずに戦い続け、相手を殺そうとする怪物そのものの男。

原作でのダリューンの好敵手の中で五指、いや三指に入るのが、このバハードゥルだろう。アルスラーンをして、「もしダリューンがあの怪物に殺されでもしたら…」とまで言わしめた唯一の存在だったのだから。あのヒルメスでさえ、アルスラーンにダリューンが負けるかもしれないと思わせた事は無いと言うのに、だ。

ただ、あれ程の強さを持ちながら神前決闘でしか戦う事が無かったのは、人語すら解しているのか疑わしい程の知性を感じさせない振るまい故であったろう。戦場に立たせた場合には、敵味方の区別が全く付かず、自分以外の全てを殺し尽くしかねない。そんなものは怖くて神前決闘以外では使える筈がない。

だから、あの原作そのままのバハードゥルなら、俺は欲しいとは思わない。だが、もしもそれなりの知性と人間らしさを保ったままのバハードゥルを手に入れる事が出来るなら、俺は千金を費やしても惜しくはないと思う。

それも不可能ではないはずだ。と言うのも、おれはバハードゥルのあの有り様が、生来のものでは決してないはずだと思うからだ。

前世でいろいろなバトル漫画を読んでいて、痛みを感じないと言うキャラが時折出てきたりしていたので、気になって調べてみた事があるのだが、それで知ったのはその様な体質の彼らが無敵の存在どころか、むしろ脆弱極まりない存在だと言う事だ。痛みを感じる事が無いと言うのは、ブレーキが無いと言うのと等しい。目をこする、指をポキポキ鳴らす、等と言う何気ない仕草ですら、痛みと言うブレーキが無い状態で行うならば、やりすぎて網膜に傷がつく、指の骨が折れまくると言った惨事になりかねない。骨折などの怪我を負ったとして、痛みを感じて庇う事もしないなら、回復どころか悪化する一方だろう。先天的にその様な体質で生まれたならば、無事に成長するように周囲はかなり注意深く育てねばならないらしい。

だが、原作を読む限り、バハードゥルに対してその様な配慮は全く感じられなかった。そんな態度で育てたならば、決してあそこまで無事に成長する筈がないのにも関わらずだ。だとするなら、バハードゥルはある程度の年齢になるまでは普通に成長し、後天的に何かのきっかけであの様な状態になったのではないか。ならば、そのきっかけとなった事態さえ回避することが出来たなら、原作とは違った状態のバハードゥルであり続ける事が出来るのではないか。俺はそう思うのだ。

◇◇

まったく、面妖な事を言い出すものですね、あの王子様は。
ラジェンドラ王子の乳母であり叔母であり、諜者の首領でもある私、カルナは思わずため息をついた。

「ビシュヌ神が昨夜夢枕に立ってな。この国にいずれ『バハードゥル』と言
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ