第三章
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「無理でござる」
「ううん、アデリナさん忍者で侍なのに」
それで強いのにとだ、家の娘はこうも言った。
「どうしてもなの」
「納豆やお刺身はいいでござるが」
見れば今日の食卓には納豆も出ている、そして梅干しもあるし瓶の塩辛もある。ただし烏賊の塩辛ではない。
「しかしでござる」
「烏賊と蛸は駄目で」
「遠慮するでござる」
「そういえばあっちでは食べないね」
家の主人も言ってきた、やはりアデリナに優しくしてくれる。
「烏賊も蛸も」
「それ言ったら納豆や梅干しもじゃない」
家の娘は自分の父にこう返した。
「そうじゃない」
「そうでござるが」
「それでもなの」
「どうしてもでござる」
どうにもと言うのだった。
「烏賊と蛸は駄目でござる」
「じゃあアデリナさんの烏賊は私が貰うね」
家の娘はアデリナに笑顔で言った。
「私烏賊のお刺身好きもだし」
「かたじけない」
アデリナは家の娘にすぐに礼を述べた。
「では食べて欲しいでござる」
「代わりに私の鮭あげるから」
彼女の嫌いなものと交換というのだ。
「そうするわね」
「鮭の方が癖ないのに」
このことに首を傾げさせたのは母親だった。
「どうして嫌いなのよ」
「いや、どうしてもね」
「嫌いなの」
「そうなの」
「拙者鮭は好きでござる」
アデリナは鮭については笑顔でこう言った。
「ではでござるな」
「交換してね」
「いただくでござる」
アデリナは笑顔で応えた、そしてだった。
二人はそれぞれ烏賊と鮭を交換して食べた、その食事の後でアデリナは家の母親にこう言われた。
「明日はラーメンにするから」
「ラーメンでござるか」
そう聞いてだ、アデリナは明るい笑顔になった。刺身の時よりも遥かに。
「ラーメンは日本の最高の麺でござる」
「ドイツでもあるの?」
「最近あるでござる、インスタントも好きでござる」
そちらのラーメンもというのだ。
「本当に最高でござる」
「だからね」
「明日はでござるか」
「ラーメンにするわね」
「楽しみにしているでござる」
笑顔で応えるアデリナだった、そしてそのラーメンを楽しみにしつつ食事を終えて日本の家族と一緒に食器を片付けてから今度は風呂に向かうのだった。
忍者ガール 完
2018・7・17
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