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オズのガラスの猫
第四幕その十
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「最高の身体でしょ」
「そこでそう言うのが貴女ね」
「その最高の身体のあたしが言うのよ」
 まさにというのです。
「今回の旅はね」
「大船に乗ったつもりでなの」
「壊れないガラスの船にね」
 こう言い加えたガラスの猫でした。
「乗ったつもりでいなさい」
「そういうことね」
「例え何があってもよ」
「貴女がいれば」
「万全なのね」
「そういうことよ、それにしてもこの像は」
 またブリキの像、五人のそれを見て言ったガラスの猫でした。
「よく出来てるわよね」
「服の細かいところまで丁寧に造っていて」
「あんた達のそれぞれの服のね」
「これで色まで着いたらね」
 ブリキの銀色でピカピカです、そこは違います。
「私達でもね」
「ガラスに映る自分を見るみたいによね」
「そう思うわね」
「そうなのね」
「そうよ、いや本当にね」
 しみじみとです、ナターシャは他の四人と一緒に五人の像を見つつ言うのでした。
「私達みたいよ」
「ブリキのあんた達ね」
「そう思ったわ」
「あたしはブリキのあたしの像を見てもね」
「特になのね」
「凄くよく出来てるとは思っても」
 それでもというのです。
「動くとかは思わないわ」
「それガラスの貴女の像を造ってもよね」
「ええ、思わないわ」
 全く、という口調で言うのでした。
「それはね」
「それはどうしてかしら」
「だって動くのはあたしだけよ」
 どんな精巧な像でもというのです。
「あたしはあたしでね」
「貴女だけが動くから」
「そうよ、動くものはね」
 それこそというのです。
「あたしだけだから、意識があるのもね」
「つまり魂があるのも」
「あたしだけだから」
「それがはっきりしてるから」
「若しその像が意識があってもあたしじゃないのよ」
「貴女は貴女ね」
「この世に一人だけいるね」
 そうしたものだというのです。
「あたしなのよ」
「そこは確かってことね」
「そうよ、この世で一番確かなことよ」
 それこそというのです。
「あたしがあたしであるってことはね」
「それじゃああたしもあたしね」
 つぎはぎ娘も言ってきました。
「あたし自身があたしだから」
「そうよ、あんたもね」
「あたしなのね」
「このことは確かよ」
「真実なのね」
「そうよ、真実よ」
 まさにそれはというのです。
「あんたはあんたよ」
「あたしそっくりに造った像が魂を持っても」
「あんたなのよ」
 あくまでというのです。
「そこはね」
「成程ね」
「だからあたしはナターシャみたいには考えないの」
「像が動いたら自分が自分かわからなくなるとか」
「全くね、むしろ何でそう考えるかね」
 それがとです、ガラスの猫はここでは首を傾げさせて
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